M79 (天体)

球状星団M79（NGC 1904）

うさぎ座の領域に位置するM79（NGC 1904）は、密集した星々が集まる美しい球状星団です。通常、このような球状星団は私たちの銀河である天の川銀河の円盤部分やハローに沿って多く見られますが、M79は銀河面から大きく離れた場所に存在するという珍しい特徴を持っています。この特異な位置から、その起源について長らく関心が寄せられてきました。

特異な起源説

2003年に行われた研究により、M79が天の川銀河の固有の天体ではなく、別の銀河に由来する可能性が強く示唆されました。この説によれば、M79は現在天の川銀河に接近しつつある矮小銀河、 specifically おおいぬ座矮小銀河に元々属していた球状星団が、天の川銀河の重力によって捕獲されたものであると考えられています。おおいぬ座矮小銀河からの捕獲候補とされる球状星団はM79の他にも発見されており、NGC 1851、NGC 2298、そしてNGC 2808の三つが挙げられています。これらの球状星団は、天の川銀河形成史や銀河の相互作用を理解する上で重要な手がかりを提供しています。

観測時の見え方

M79は、使用する観測機材によってその見え方が大きく変化し、観測者に多様な表情を見せてくれます。

双眼鏡: 双眼鏡を用いると、M79は小さくぼんやりとした星雲状の光斑として捉えられます。
口径5cm程度の望遠鏡: このクラスの望遠鏡では、光の集まりが完全な円形ではなく、ややいびつな形状であることが見て取れます。
口径10cm程度の望遠鏡: さらに口径を大きくすると、周辺部の個々の星（微星）が分離して見え始め、星団の粒が感じられるようになります。
口径20cm程度の望遠鏡: この口径になると、球状星団の周囲を構成する微星が明確に分離され、より多くの星を確認できるようになります。
口径30cm程度の望遠鏡: 大口径の望遠鏡では、星団の中心部を除いたほとんど全ての星が分離して見え、非常に見事な眺めとなります。星々が密集する様子を詳細に観察できます。
口径40cm以上の望遠鏡: このクラスの望遠鏡では、星団の中心部を含め、ほぼ完全に個々の星に分離して観察することが可能です。

M79の形状にはいくつかの特徴的な点があります。中心の最も明るい部分は、まるで三方向にとがっているかのように見えることがあります。また、星団の西側を取り囲むように始まり、南側へと弧を描いて伸びる星の並び（星列）は特に印象的で、写真でもその特徴がはっきりと捉えられています。

観測史

M79は、1780年10月26日にフランスの天文学者ピエール・メシャンによって発見されました。その後、同年12月17日にはシャルル・メシエによって自身の作成するメシエカタログに79番目の天体として登録されています。

メシエはM79を「星のない星雲」と記し、うさぎ座にある6等星の近くに位置すること、メシャンが発見したこと、そして中心が輝きややぼんやりとした美しい星雲状であると描写しました。イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、自身の20フィート反射望遠鏡で観測し、「きれいに見える」「直径3分角の球状星団」「星数が豊富」と記しています。また、ウィリアム・ヘンリー・スミスは、M79を「輝く星状の星雲で、きれいな対象」「中心部ほど良く光る」と表現しています。

これらの歴史的な観測記録は、当時の天文学者たちがM79をどのように捉え、その特徴をどのように記述したかを知る上で貴重な資料となっています。

もう一度検索