M93 (天体)

M93（とも座の散開星団）

M93（NGC 2447）は、とも座の方向に見られる美しい散開星団です。

概要

この星団は、観測手段によって様々な見え方をするのが特徴です。

双眼鏡を用いると、M93はやや明るい星々が形成する小さな三角形として視認できます。全体が彗星の核のように見え、星団が比較的よくまとまっている様子がうかがえるでしょう。

口径10cmクラスの望遠鏡で観測すると、およそ20個の星が分解して見えてきます。これらの星々は多様な色合いを呈しており、特に星団の西側には特徴的な二つの橙色の星を見つけることができます。当時の観測者マラスは、10cm望遠鏡で見たM93を「ぎっしりと詰まった宝石」と形容し、その美しさを称えました。

さらに口径を大きくし、20cmクラスの望遠鏡で観測すると、より多くの微かな星々が視野に現れ、一段と壮観で素晴らしい眺めを楽しむことができます。

M93は、比較的小さな口径の望遠鏡から大口径の望遠鏡まで、それぞれの機器で異なる魅力を示してくれるため、多くの観測者にとって満足度の高い対象と言えるでしょう。しかし、日本から観測する場合、M93は南の低い空に位置するため、その見え方はシーイング（大気の揺らぎ）などの気象条件に大きく左右されやすい点を留意する必要があります。

観測史

M93は、1781年にフランスの有名な天文学者シャルル・メシエによって発見されました。メシエは自身の作成した星雲・星団カタログにこの天体を加え、その記録の中で「おおいぬ座と、とも座の船首の間に位置する星団で、星雲状ではない。直径は約8分角」と記しています。

その後、ウィリアム・ハーシェルはこの星団を構成する星々の明るさを観察し、主に8等から13等の範囲にある星々で構成されているとしました。

別の観測者であるスミスは、M93の外観について「海のひとでのような感じ」と表現し、特に星団の南西部分が最も明るく見え、星の等級は7等から12等の範囲にあると詳細な記述を残しています。

また、ジョーンズという観測者は、M93の広がりを持つ姿を、空を舞う「羽を広げた蝶」に見立てたとも伝えられています。

観測史において特筆すべきは、シュバリエ・タンゴスという人物がM93を彗星と誤認したエピソードです。この間違いは、天文学者フランツ・フォン・ツァハから「天文学上、全く言語道断のしくじり」と厳しく批判されました。タンゴスはフランス陸軍の大尉でありながら天文学に関心を持ち、1789年にマルタ島に観測所を設立するほどの熱意を持っていましたが、亜燐酸を用いた実験中に爆発事故を起こし、自らの観測所を含む多数の建物を吹き飛ばしてしまったという驚くべき逸話が残っています。さらに彼は、メシエに対して誰も再発見できないはずの彗星を発見したと虚偽の報告をしたり、彗星が太陽面を通過する現象を観測したと嘘をついたりするなど、真偽の怪しい観測報告をしていた人物としても知られており、これらの出来事はM93の観測史にユニークな彩りを添えています。

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