MUSIC (フジファブリックのアルバム)

フジファブリック『MUSIC』：失われた才能と、残された希望

『MUSIC』は、フジファブリックが2010年7月28日に発表した5枚目のオリジナルアルバムです。前作『CHRONICLE』から約1年3ヶ月ぶり、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ移籍後初の作品としてリリースされました。

このアルバムは、2009年12月に急逝したバンドの中心人物、志村正彦氏が残した楽曲を、金澤ダイスケ、加藤慎一、山内総一郎の3人が、サポートドラマーの刄田綴色（東京事変）と共に完成させたという、特別な背景を持っています。

制作の背景

志村氏が残したデモは、アレンジが大枠固まっていたものから、歌詞と歌まで録音されていたもの、そして歌詞や歌録りが未完成のものまで、様々な状態でした。そのため、本作には初めて志村氏以外のメンバーがメインボーカルを務める楽曲や、志村氏以外のメンバーが作詞した楽曲が収録されることになりました。

収録曲について

アルバムには、志村氏が生前に構想していた楽曲に加え、メンバーそれぞれの個性が光る楽曲も収録されています。以下に、収録曲の中からいくつかの楽曲について解説します。

MUSIC: 志村氏が最も気に入っていたデモの一つ。普遍性を追求していた彼の音楽観を象徴する楽曲として、アルバムタイトルにも採用されました。ドラムをあえて入れず、アコースティックギターとコーラスを前面に出したアレンジが特徴です。
夜明けのBEAT: フジファブリックの真骨頂とも言えるダンスナンバー。志村氏が残した詞曲とボーカル、ギターソロをもとに、メンバー3人と刄田綴色が完成させました。テレビ東京系ドラマ24「モテキ」の主題歌として、フジファブリック初のドラマ主題歌となりました。
Bye Bye: PUFFYに提供した楽曲のセルフカバー。フジファブリックならではのアレンジが施されています。
会いに: 本作で唯一、歌詞も志村氏のボーカルトラックも残されていなかった楽曲。加藤氏が大半を作詞し、山内氏がボーカルを担当しました。刄田綴色のドラムをイメージして作られた曲で、リハーサルスタジオでメンバーと刄田が一発録りしたラフなデモが元になっています。
Mirror: 山内氏がボーカルと作曲を担当した楽曲。歌詞カードには歌詞が鏡文字で書かれています。
眠れぬ夜: 志村氏が長年あたためていた楽曲。何度もプリプロレコーディングが行われながらも、発表されることはありませんでしたが、本作の制作にあたり、志村氏自らが持ち込んできたとのことです。

メンバーの演奏

本作では、志村正彦氏が生前のボーカルとコーラス、ギターソロを披露しています。山内総一郎はボーカル、コーラス、エレキギター、アコースティックギター、マンドリン、ピアノ、オルガン、ガットギター、Tabla Machineを担当。金澤ダイスケはMini Moog、ピアノ、メロトロン、Rhodes、Virus、Programming、オルガン、Farfisa、シンセサイザー、Strings Arrangementを担当。加藤慎一はベース、パーカッション、コーラスを担当。そして、刄田綴色（東京事変）がドラムスとパーカッションを担当しています。

まとめ

『MUSIC』は、フジファブリックにとって、志村正彦氏の死という大きな喪失を乗り越え、新たな一歩を踏み出すための作品となりました。志村氏が残した音楽への愛情と、残されたメンバーの決意が込められた、感動的なアルバムです。

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