Macintosh Quadra 840AV

Macintosh Quadra 840AV：革新的なマルチメディアPC

Macintosh Quadra 840AVは、Appleが1993年7月から1994年7月にかけて販売したパーソナルコンピュータです。当時のMacintoshとしては最速の処理能力を誇り、マルチメディア機能に重点を置いた設計が特徴でした。

ハードウェア

CPU

Motorola製のMC68040プロセッサを40MHzで駆動し、当時のMacintoshとしては最速の処理速度を実現しました。Quadra 840AV以降のハイエンドMacintoshはPowerPCベースに移行したため、68kプロセッサを搭載したMacintoshとしては最速の機種となります。

AV入出力

Macintoshとして初めて、48kHz/16ビットステレオオーディオの再生・録音機能、S-Videoおよびコンポジットビデオの入出力機能を搭載しました。ビデオ再生能力向上のため、標準グラフィックスとビデオ処理専用の2つのフレームバッファを使用し、入力された映像をMacintoshのインターフェース上でスケーラブルなウィンドウとして表示することが可能でした。また、Appleは音声認識技術PlainTalkをサポートした最初のPCメーカーでもあります。

DSP

AT&T製の3210 Digital Signal Processorを搭載し、66.7MHzで駆動しました。主にオーディオ・ビデオ処理の高速化を目的としており、Apple GeoPort Telecom Adapter Kitを使用することで、モデム、ファックス、テレフォニーなど、DSPを活用した様々な通信機能が実現しました。ただし、プログラミングが複雑であったため、このDSPを積極的に活用したソフトウェアは多くありませんでした。

筐体

先行モデルであるMacintosh Quadra 800と同様の外観を採用しています。ハウジング、シャーシ、電源ユニット、内部ストレージ構成は共通ですが、フロントパネルとリアパネルのデザインが変更され、電源ボタンが背面に移動しました。

拡張性

Quadra 800に搭載されていたプロセッサダイレクトスロットと2つ目のADBポートは搭載されていません。代わりに、DAVスロット（NuBusスロットAに沿ったもの）と新しいGeoPortが搭載されています。メモリは、72ピン60ns SIMMを最大128MBまで搭載可能です。

評価

ナショナルポストのジョナサン・シェブロー氏は、1993年8月7日の記事で、Quadra 840AVとCentris 660AVを、SGI Indyに次いで魅力的なマルチメディアコンピュータと評価し、Appleがデスクトップマルチメディアという巨大産業の先駆けとなったと述べています。

バイト誌のベン・トンプソン氏は、1993年9月の記事で、Appleとシリコングラフィックスが、オーディオ・ビデオ入力をデスクトップPCの標準機能とした先駆者であり、「ビジネスマンのコミュニケーション方法を変える可能性を秘めている」と評価しました。また、Quadra 840AVを、従来の段階的な技術革新というAppleのトレンドを打ち破る、驚くべき飛躍的な製品と評しました。彼は840AVを総合的に最速のMacintoshとして評価し、その理由として、SCSI、シリアル、イーサネット、サウンド用の専用DMAチャネルなど、AVシリーズの革新的なハードウェア機能を挙げています。しかし、System 7のアーキテクチャでは、SCSI DMAの性能を十分に発揮できない可能性も指摘し、マイクロカーネルベースのOSへの刷新が必要であると示唆しました。さらに、テレコミュニケーション、Print-to-FAX、音声認識、ビデオキャプチャなどの豊富なAV機能を試用した結果、互換性の問題が少なく、生産性向上に貢献すると評価しています。

まとめ

Macintosh Quadra 840AVは、当時の最先端技術を搭載し、マルチメディア機能に特化した革新的なパーソナルコンピュータでした。その登場は、デスクトップマルチメディアという新たな分野の幕開けを告げるものであり、後のコンピュータ業界に大きな影響を与えました。

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