Mamushi (メーガン・ザ・スタリオンの曲)

Mamushi（マムシ）

アメリカ合衆国のラッパー、メーガン・ザ・スタリオンが、日本のラッパー千葉雄喜を客演として迎えた楽曲です。メーガンの3作目のスタジオ・アルバム『Megan』に収録されています。英語と日本語を織り交ぜたバイリンガルなラップが特徴的なトラックです。

背景とヒットへの経緯

「Mamushi」は、2024年6月28日にアルバム『Megan』の収録曲として発表されました。アルバムリリース後、特にTikTokで大きな注目を集め始め、日本人ダンサーMONA氏によるダンス動画が人気を博したことをきっかけに、瞬く間に拡散されました。この現象は急速に広がり、同年7月9日までに本楽曲を使用したTikTok動画が15万7千件以上作成されるに至りました。このバイラルな人気を受け、メーガン自身もこのダンスチャレンジに乗じ、アニメ『美少女戦士セーラームーン』の主人公に扮するなど、自身のTikTokアカウントに複数の動画を投稿し、話題をさらに広げました。

こうした反響を受けて、「Mamushi」は7月30日にアルバムからの4枚目のシングルとして、アメリカのアーバンラジオ局向けに正式にリリースされました。この日、「Mamushi」はアーバンラジオ局で最も多くプレイリストに追加される楽曲の1位となりました。同日、メーガンはアトランタで開催されたカマラ・ハリス副大統領の選挙集会で本楽曲を披露し、会場を熱狂させました。その後も、K-POPアーティストやスポーツ選手など、様々な分野の著名人がダンス動画を投稿するなど、グローバルな現象へと発展しています。

また、2024年10月25日には、韓国のガールズグループTWICEをフィーチャーしたリミックスバージョンが、デラックス版アルバム『Megan: Act II』に追加収録されています。

楽曲の内容

本楽曲は、日本のKoshyがプロデュースを手掛け、メーガン、千葉雄喜、オオタ氏が作詞作曲に携わりました。メーガンと千葉が英語と日本語を織り交ぜたバイリンガルなラップを披露しています。

タイトルの「Mamushi」は、日本に生息する毒ヘビ「マムシ」を指しています。これは、メーガンがこれまでに発表したヘビをモチーフにした楽曲（『Cobra』、『Hiss』、『Boa』など）の流れを汲むものです。歌詞は、メーガンが現在の地位と成功を表現するために、過去の自分と向き合い、そこから解放される様子を描いていると解釈されています。特に印象的なのは日本語のサビで、前半を千葉が「お金稼ぐ 俺らはスター」と、後半をメーガンが「お金稼ぐ 私はスター」とラップするフレーズは耳に残ると評判です。

ミュージックビデオ

ケヴィン・“オンダ”・レイヴァ氏が監督を務めたミュージックビデオは、2024年8月9日に公開されました。日本の神奈川県にある鶴巻温泉・陣屋や円覚寺で撮影が行われ、日本の伝統的な風景を舞台にしたユニークな世界観が描かれています。

物語は温泉旅館で展開され、メーガンが暴力団風の男たちをマムシに変身させて殺害し、千葉雄喜演じる従業員が彼らの遺体を処理し、メーガンの意のままになる不死身の存在として蘇らせるという、ダークファンタジー風の内容です。映像表現は、黒澤明監督の映画『夢』（1990年）の青い顔の男たちのシーンや、『ラッシュアワー2』（2001年）などからの影響が見られます。笠松将氏をはじめとする多くの日本人俳優が出演している点も注目されました。このMVは高く評価され、2024年9月12日に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードで「最優秀トレンディング・ビデオ賞」を受賞しました。

批評家の評価

音楽評論家からは概ね好意的な評価が集まりました。同じアルバム収録曲の『Otaku Hot Girl』と比較されることが多くありました。

肯定的な意見としては、NME誌がユウキ・チバの力強いラップとクールなビートがメーガンのスタイルに変化をもたらしたと評価しました。HotNewHipHopは、両アーティスト間の「素晴らしいケミストリー」を特筆。PitchforkやBPM誌は、『Otaku Hot Girl』よりも「Mamushi」を高く評価し、テーマに沿った多言語表現や、千葉雄喜との相互作用が楽曲をより魅力的にしていると指摘しました。

一方で、ローリング・ストーン誌は、シンプルな構成を挙げつつも、海外ファンへのメッセージ性やTikTokでの人気を評価。他の楽曲を際立たせる「基本的な味付け」であるとも述べています。

チャートにおける成功

「Mamushi」は、全米ビルボード Hot100チャートに初登場68位を記録し、最高位は36位に到達しました。これは千葉雄喜にとって、キャリア初のHot100チャート入りという大きな成果となりました。また、Hot Rap Songsチャートでは最高5位、Hot R&B/Hip-Hop Songsチャートでは最高7位を記録しています。特にワールド・デジタル・ソング・セールスチャートでは、メーガンと千葉雄喜の両者にとって初めてとなる1位を獲得し、合計8週間にわたり首位を維持する快挙を成し遂げました。

ストリーミングやデジタルダウンロード向けには、通常のバージョンに加え、sped up（高速化）、chopped & screwed（低速化・編集）、インストゥルメンタルなどのバージョンもリリースされています。

もう一度検索