Mark 2 (核爆弾)

マーク2 シンマン：開発中止となったガンバレル型プルトニウム原子爆弾

第二次世界大戦下、[アメリカ合衆国]]はマンハッタン計画において、原子爆弾の開発にしのぎを削っていました。その中で開発が進められていたのが、ウラン型原子爆弾のリトルボーイ(Mark 1)と、プルトニウム型原子爆弾のファットマン]です。しかし、この2つの[[原子爆弾以外にもう一つ、開発されていた原子爆弾がありました。それが、この記事で解説するマーク2 シンマン(Thin Man)です。

シンマンは、リトルボーイと同様にガンバレル型と呼ばれる方式を採用した原子爆弾でした。ガンバレル型とは、臨界量未満の核物質を爆薬によって高速で衝突させ、臨界状態に達して核爆発を起こす方式です。リトルボーイがウラン235を使用していたのに対し、シンマンはプルトニウム239を使用するという違いがありました。

しかし、シンマンの開発はリトルボーイと比べて非常に困難を極めました。その大きな理由は、プルトニウム239に含まれるプルトニウム240という同位体の存在です。プルトニウム240は自発核分裂を起こす性質を持っており、核物質の衝突前に中性子を放出し、核分裂反応が過早に始まってしまう可能性がありました。これを過早爆発と呼びます。過早爆発が起きると、十分な核分裂反応が起こる前に核物質がばらばらになり、核爆発を起こすことができません。

この過早爆発を防ぐためには、核物質を非常に高速で衝突させる必要がありました。シンマンの設計では、プルトニウム239を秒速900メートルという驚異的な速度で衝突させる計画でした。そのため、直径2フィート、長さ18フィートという巨大な砲身が必要となり、その重量は7,500ポンドにも達すると予想されました。これは、全長約10フィート、重量11,000ポンドのリトルボーイと比較しても非常に大きく、空気力学的な不安定さも懸念されました。実際、爆弾ケーシングの投下実験が行われましたが、その不安定さが確認されました。

様々な困難を乗り越えるべく、マンハッタン計画では様々な改良が試みられましたが、過早爆発の問題を完全に解決することはできませんでした。そのため、1944年7月、シンマンの開発は中止されることとなりました。

シンマンの開発中止後、[マンハッタン計画]]ではリトルボーイと、より安定した核爆発を実現できるインプロージョン方式の[[ファットマン]に開発の重点が置かれることとなります。インプロージョン方式は、核物質を内側から圧縮することで臨界状態に達させる方式であり、過早爆発のリスクを軽減することができました。

シンマンの開発は失敗に終わったように見えるかもしれませんが、この開発を通して得られた知見は、後の核兵器開発に大きく貢献したと考えられます。特に、プルトニウムを用いた核兵器開発における困難さや、過早爆発の問題に対する理解は、ファットマンの開発成功に繋がった重要な要素でした。シンマンは、核兵器開発の歴史において、成功例とはならなかったものの、重要な教訓を残した存在と言えるでしょう。

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