Martian Piloted Complex

「火星有人複合体」（ロシア語: марсианского пилотируемого комплекса）は、ソビエト連邦が構想した有人火星探査計画です。この計画は、宇宙飛行士を火星へ送り込み、長期間の滞在を経て地球へ帰還させることを目的としていました。

概要

この計画では、ホーマン遷移軌道と呼ばれる、太陽の重力を利用した効率的な軌道を利用して火星へ向かう予定でした。火星軌道に到達後、着陸船が火星表面に着陸し、宇宙飛行士はそこで1年以上の滞在を行う計画でした。

初期の見積もりでは、総重量が1630トンにも及ぶ巨大な宇宙船が必要とされ、そのうち地球に帰還する再突入船はわずか15トンでした。往復の旅程は30ヶ月にも及ぶと想定されていました。この壮大な計画を実現するためには、当時開発中だったN-1ロケットが不可欠でした。N-1ロケットは1機あたり75から85トンの打ち上げ能力を持つとされ、この計画では20から25機ものN-1ロケットを投入する予定でした。しかし、N-1ロケットの開発は難航し、計画は実現に至りませんでした。

計画の主要な要素

ホーマン遷移軌道: 地球から火星への移動に最もエネルギー効率の良い軌道。
火星着陸船: 火星表面に着陸し、宇宙飛行士が滞在するための居住区。
再突入船: 地球への帰還に使用される小型の宇宙船。
N-1ロケット: 計画を実現するための大型ロケット。多数の打ち上げが必要とされた。

計画の背景と意義

ソ連は、アメリカとの宇宙開発競争において、有人月面着陸に遅れをとった後、有人火星探査で巻き返しを図ろうとしていました。しかし、技術的な困難と資金不足により、この計画は実現しませんでした。

「火星有人複合体」計画は、その後の有人火星探査計画の基礎となる概念を多く提示しました。この計画で検討された技術や構想は、その後の宇宙開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

関連事項

TMK: ソ連の別の有人火星探査計画。本計画と同様に実現には至らなかった。

外部リンク

Марсианский пилотируемый ракетно-космический комплекс
Пилотируемый полет на Марс – российская концепция
Марс - красная звезда

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