Microsoft Open Specification Promise

Microsoft Open Specification Promise (OSP) について

Microsoft Open Specification Promise（OSP）は、マイクロソフトが2006年9月に公開した文書で、特定の技術仕様に準拠した実装に対して、マイクロソフトが特許権を行使しないことを約束するものです。これはライセンスではなく、権利不行使特約（Covenant not to sue）に近い法的性質を持ちます。OSPは、実装が対象となる仕様に適合している場合にのみ適用され、仕様の一部のみを実装した場合、特許権不行使の約束は、仕様に準拠した部分のみに限定されます。

OSPの法的性質

OSPは、マイクロソフトが特定の特許権を行使しないと約束するものであり、実装者に何らかの権利を許諾するものではありません。あくまで、仕様に準拠した実装であれば特許侵害で訴えることはないという、一種の保証です。

OSPと自由ソフトウェア/オープンソース

OSPは特定のライセンス形式に依存しないため、自由ソフトウェアやオープンソースプロジェクトにも適用可能であると考えられます。しかし、OSPがこれらのプロジェクトに十分な保護を提供するかについては議論があります。一部の専門家は、OSPがこれらのライセンスと互換性があり、十分な保護を提供すると評価していますが、反対の意見も存在します。

適用対象の技術仕様

OSPが適用される技術仕様は多岐にわたります。

ウェブサービス関連

OpenService フォーマット仕様
Webスライス フォーマット仕様
XML検索サジェスチョン フォーマット仕様

仮想化関連

Virtual Hard Disk (VHD) イメージフォーマット仕様
Microsoft Application Virtualization ファイルフォーマット仕様v1
Hyper-V 機能仕様

セキュリティ関連

RFC4406 – Sender ID: E-Mail 認証
RFC4408 – Sender Policy Framework
RFC4407 – 電子メールメッセージ中の「責任を持つはずのアドレス」
RFC4405 – 電子メールメッセージの「責任を持つ投函者」表示用SMTPサービス拡張
RFC7208 – [Sender Policy Framework]
U-Prove 暗号化仕様 V1.0
U-Prove Technology Integration into the Identity Metasystem V1.0

オフィスファイル形式関連

Office XML ファイル形式
Office 2003 XML リファレンス スキーマ
Office Open XML 1.0–Ecma-376
Office Open XML ISO/IEC 29500:2008
OpenDocument Format for Office Applications v1.0
OpenDocument Format for Office Applications v1.0 ISO/IEC 26300:2006
OpenDocument Format for Office Applications v1.1
Office バイナリ ファイル形式 (Word, PowerPoint, Excel)

構造仕様

[MS-DOC]: Word バイナリファイルフォーマット構造仕様
[MS-PPT]: PowerPoint バイナリファイルフォーマット構造仕様
[MS-XLS]: Excel バイナリファイルフォーマット構造仕様
[MS-XLSB]: Excel バイナリファイルフォーマット構造仕様
[MS-ODRAW]: Office Drawing バイナリファイルフォーマット 構造仕様
[MS-CTDOC]: Wordカスタムツールバー バイナリファイルフォーマット 構造仕様
[MS-CTXLS]: Excelカスタムツールバー バイナリファイルフォーマット 構造仕様
[MS-OFORMS]: Office Forms バイナリファイルフォーマット 構造仕様
[MS-OGRAPH]: Office Graph バイナリファイルフォーマット 構造仕様
[MS-OSHARED]: Office 共通データ型とオブジェクト 構造物仕様
[MS-OVBA]: Office VBA ファイルフォーマット 構造仕様
[MS-OFFCRYPTO]: オフィス ドキュメント暗号化 構造仕様

Office ファイル形式関連

[MS-DOCX]: Word Extensions to the Office Open XML File Format
[MS-ODRAWXML]: Office Drawing Extensions to Office Open XML Structure Specification
[MS-PPTX]: PowerPoint Extensions to the Office Open XML File Format
[MS-PST]: Outlook Personal Folders File Format Structure Specification
[MS-XLSX]: Excel Extensions to the Office Open XML SpreadsheetML File Format

Windows 複合形式

[MS-CFB]Windows コンパウンド バイナリ ファイルフォーマット仕様

グラフィック形式

Windowsメタファイル フォーマット仕様
インク シリアライズ フォーマット 仕様
JPEG XR フォーマット 仕様

マイクロソフトのコンピューター言語

[MS-XAML]: XAML オブジェクトマッピング仕様
[MS-WPFXV]: WPF XAML ボキャブラリー仕様
[MS-SLXV]: Silverlight XAML ボキャブラリー仕様

ロボット工学

分散ソフトウェアサービス プロトコル – DSSP/1.0

同期関連

FeedSync v1.0, v1.0.1

Windows Rally テクノロジー

Windows Connect Now – UFD and Windows Vista
Windows Connect Now – UFD for Windows XP

Microsoft Community Promise (CP)

Microsoft Community Promise（CP）は、OSPと同様に、マイクロソフトが特定の技術仕様の実装に対して特許権を行使しないことを約束する文書です。CPは、仕様で必要とされる必須部分を全て実装する必要がある点でOSPと異なります。つまり、OSPよりもさらに厳格な準拠が求められます。

OSPとCPの比較

まとめ

OSPとCPは、マイクロソフトが特定の技術仕様の利用を促進するために提供している重要な取り組みです。これらの文書は、開発者がこれらの仕様を実装する際に特許侵害の懸念を軽減し、技術革新を促進する役割を果たしています。しかし、これらの文書の法的性質や適用範囲を理解し、自らの開発活動に適切に利用することが重要です。

参照

Microsoft
特許法の用語集

外部リンク

[MS-DEVCENTLP]: Open Specification Promise | Microsoft Docs
Microsoft Open Specification Promise - ウェイバックマシン
[MS-DEVCENTLP]: Microsoft Community Promise | Microsoft Docs
Microsoft Community Promise - ウェイバックマシン
Analysis of OSP by standards lawyer Andy Updegrove
Analysis of OSP by Software Freedom Law Center.
[MS-OPENSPECLP]: Open Specifications | Microsoft Docs

もう一度検索