Microsoft Visual C++

Visual C++：Windows開発の統合開発環境

Visual [C++]]は、Microsoft社が提供するC言語、C++言語、C++/CLI言語に対応した統合開発環境]です。[[コンパイラやデバッガなどのツールを統合的に提供し、Windowsアプリケーション開発において事実上の標準環境として広く利用されています。高い最適化性能が特徴で、多くの開発者から支持されています。 通称VC、VC++、MSVCなどと呼ばれています。Microsoft C/C++などを前身とする歴史ある開発環境です。

Visual C++ の進化と特徴

Visual C++は、バージョンを重ねるごとに標準C++規格への準拠度を高め、機能を強化してきました。Visual C++ 7.1 (.NET 2003)からは標準C++規格への対応が大幅に向上し、以降のバージョンではC++11、C++14、C++17といった最新の規格にも対応しています。

エディションは、以前は上位エディションのみ高度な最適化機能を提供していましたが、Visual C++ 2005以降はExpressエディションを含む全エディションで基本的な最適化が可能です。ただし、プロファイリングに基づく高度な最適化（PGO）は上位エディションでのみ利用できます。

Visual C++ 2005以降は、Visual Basic、Visual C#などの他の開発言語と統合されたVisual Studioの一部として販売されています。Visual Studioには、無料のCommunityエディションや、機能制限のあるExpressエディション（2013まで）、そしてより高度な機能を持つProfessionalエディションやEnterpriseエディションなど、複数のエディションが存在します。

Visual C++は、Windows APIやMFC（Microsoft Foundation Classes）を使用してコードベースのプログラム開発を行います。RAD(Rapid Application Development)ツールではないものの、リソースエディタを使用することで、ダイアログやメニューなどのUIデザインを視覚的に行うことができます。MFCはC++専用のクラスライブラリで、アプリケーションフレームワークとしての役割も担いますが、Windows APIのラッパーであるため、Visual BasicやDelphiのようなRADツールほどの生産性はありません。ただし、マネージ拡張C++やC++/CLI、C++/CXといった拡張機能を利用することで、Windows FormsアプリケーションやWindowsストアアプリ開発においてRAD環境に似た開発体験を提供します。

Visual C++は、旧来のWin32/MFCアプリケーションと.NET Frameworkのクラスライブラリを併用するハイブリッド開発も可能です。これにより、.NET言語で開発されたロジックライブラリやGUI部品をWin32/MFCアプリケーションで利用するなど、異なる技術を組み合わせた開発が可能になります。

64ビット命令の生成にも対応し、クロスコンパイル機能も備えています。Visual C++ 11.0 (2012)からはARMプロセッサ、Visual C++ 14.1 (2017)からはARM64アーキテクチャにも対応しています。DirectXとの親和性も高く、Windowsマルチメディアアプリケーション開発に適しています。Visual Studio 2015からは、AndroidやiOS向けのモバイルアプリケーション開発も可能となりました。ただし、モバイルアプリ開発ではMSBuildビルドシステムとClangコンパイラが使用されます。

言語とコンパイラ

Visual C++コンパイラは、C言語、C++言語、C++/CLI、C++/CXといった複数の言語に対応しています。C言語規格に関しては、初期バージョンではC89に対応していましたが、最新のバージョンではC99、C11にも対応しています。C++言語規格についても、C++98、C++11、C++14、C++17といった主要な規格に対応しており、継続的な更新が行われています。

コンパイラの拡張機能

Visual C++コンパイラは、標準規格を超えた独自の拡張機能も提供しています。インラインアセンブラ、コンパイラCOM対応、属性、OpenMP、C++/CLI構文の拡張、Type Traits、.NET/WinRT対応など、開発効率やパフォーマンス向上に役立つ様々な機能が用意されています。また、ライブラリもCRT関数、コンパイラ組込関数、STL/CLR、並列処理ライブラリなど、豊富な拡張機能を提供しています。特にVisual C++ 2005からは、バッファオーバーフロー対策やマルチスレッド安全性の向上が図られており、より安全で信頼性の高い開発が可能になりました。

マネージ拡張C++、C++/CLI、C++/CX

マネージ拡張C++は.NET Frameworkに対応するための拡張でしたが、C++/CLIが登場したことにより、現在では非推奨となっています。C++/CLIは、.NET Framework上で動作するアプリケーション開発のための言語拡張です。C++/CXは、Windowsストアアプリ開発のための言語拡張です。Visual Studio 2015 Update 3以降ではC++/WinRTというライブラリも利用可能となり、UWPアプリ開発の選択肢が広がっています。

無料版とランタイムライブラリ

Visual C++には、無料版も提供されています。無料版では、上位エディションと比較して機能が制限されていますが、学習用途や小規模な開発には十分な機能を備えています。また、Visual C++のランタイムライブラリは、静的リンクと動的リンクの両方に対応しており、アプリケーションの実行にはバージョンに合ったランタイムライブラリが必要となります。ランタイムライブラリの互換性については、バージョン間の差異により、メモリ管理上の問題が発生する可能性があることに注意が必要です。VC2015以降はUniversal CRTの導入により、一定の条件下で異なるバージョン間の互換性が向上しています。

まとめ

Visual C++は、長年にわたって進化を続け、Windowsアプリケーション開発において重要な役割を果たしてきた統合開発環境です。高い最適化性能、豊富な機能、そして無料版の提供など、様々な利点を持つVisual C++は、これからも多くの開発者によって利用されていくでしょう。初心者から上級者まで、幅広い開発者にとって有用なツールです。

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