Mk.VIII ハリー・ホプキンス軽戦車

Mk.VIII軽戦車 ハリー・ホプキンス：開発難航に見舞われた軽戦車の軌跡

第二次世界大戦下のイギリスにおいて、ヴィッカース・アームストロング社が開発したMk.VIII軽戦車「ハリー・ホプキンス」は、数奇な運命を辿った戦車として知られています。アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの顧問の名を冠したこの戦車は、同社がイギリス陸軍向けに生産した軽戦車シリーズの最終モデルであり、前型であるMk.VIIテトラーク軽戦車の代替を目指していました。

開発の経緯と生産の困難

ハリー・ホプキンスは、テトラークをベースに装甲強化や車体の大型化などの改良が加えられました。車体前面と砲塔の装甲は38mm、側面は17mmに増加し、傾斜装甲も採用することで防御力を向上させました。しかし、これらの変更によって車体は大型化、重量増加し、従来の空輸手段では輸送できなくなりました。

1941年末、イギリス陸軍省はハリー・ホプキンスの試作車を承認し、当初1000両の先行発注を行いました。その後、発注数は2410両にまで増加しましたが、1942年6月に生産が開始されると、設計上の問題が次々と発生しました。サスペンションを始めとする様々な欠陥が発見され、陸軍省と戦闘車両試験協会から強い批判を受けました。そのため設計変更を余儀なくされ、生産は大幅に遅延しました。結果として、1945年2月の生産終了までに製造されたのはわずか約100両にとどまりました。

軽戦車の時代遅れと新たな用途の模索

1941年半ば、イギリス陸軍は軽戦車の戦闘能力の低さを問題視し、軽戦車の運用を縮小する方針を決定しました。フランス戦での経験から、軽戦車は敵主力戦車に対抗するには脆弱すぎることが明確になったのです。偵察任務には、より機動性の高い偵察車が適しているという判断もありました。

ハリー・ホプキンスの生産開始が遅れたことに加え、軽戦車自体の需要が減少したため、完成した車両の多くは戦闘に投入されませんでした。一部は飛行場防衛のためにイギリス空軍に配備されました。

空挺部隊支援を目指したアレクト自走砲

ハリー・ホプキンスをベースに、空挺部隊の近接支援を目的とした自走砲「アレクト」も開発されました。95mm榴弾砲を搭載し、軽量化のために装甲を薄くしたことで、最高速度は49.6km/hに達しました。しかし、アレクトも生産数はごくわずかで、実戦投入されることはありませんでした。一部の車両はブルドーザーに改造され、工兵部隊で使用されたようです。

ハリー・ホプキンス軽戦車の遺産

ハリー・ホプキンスは、開発上の問題や戦況の変化によって、当初の期待とは裏腹にその性能を発揮することなく終わった軽戦車です。しかし、その開発過程や派生型アレクトの試みは、第二次世界大戦下の戦車開発における困難さと、変化する戦場環境への対応の難しさを示す貴重な事例となっています。また、空挺部隊支援という新たな用途への模索は、戦車という兵器の可能性を探る試みとして注目に値します。生産数の少なさから詳細は不明な部分も多いですが、この戦車の存在は、戦争の複雑さと技術開発の困難さを改めて想起させるものと言えるでしょう。

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