N88-BASIC

N88-BASIC:NECパソコンを支えたプログラミング言語



N88-BASICは、1980年代にNECが製造したPC-8800シリーズPC-9800シリーズのパーソナルコンピュータに標準搭載されたBASIC言語処理系です。PC-8001に搭載されたN-BASICの後継として、大幅な機能拡張が施されました。ロゴやマニュアルでは「N88-BASIC」と小さく「88」と表記され、様々なバージョンでもこの表記方法が継承されています。

N88-BASICの種類



N88-BASICには、起動方法や機能によっていくつかの種類がありました。

ROM-BASIC: コンピュータの起動時にROMから自動的に読み込まれ起動する基本的なバージョンです。
DISK-BASIC: フロッピーディスク(FDD)やハードディスク(HDD)などの外部記憶装置を扱うための機能拡張が施されたバージョンで、別売りの場合もありました。FDDの普及により標準添付されるようになったものの、MS-DOSの普及後には再び別売りに、最終的にはサポート対象外となりました。MS-DOS普及以前は、簡易的なDOSとしての役割も担っていました。
* DOS-BASIC: MS-DOS環境で動作するバージョンです。

PC-8800シリーズにおけるN88-BASIC



PC-8801への搭載を皮切りに、PC-8800シリーズではN88-BASICが主要なプログラミング言語として活躍しました。マイクロソフトのLevel-3 BASICインタプリタをベースとして開発されており、PC-8001のN-BASICと一定レベルの上位互換性がありました。

N88-BASICは、PC-8800シリーズの機能拡張に合わせて、主にV1とV2の2つのメジャーバージョンが存在します。「V1」は後から付けられた名称で、当初は無印版と呼ばれていました。V2はPC-8801mkIISRから搭載され、アナログRGBの採用による高精細なグラフィック表示やFM音源への対応など、ハードウェアの進化を反映した機能強化がなされました。V1とV2はほぼ完全な上位互換性を保っていますが、ハードウェアの違いから、V1用のプログラムをV2で実行するとグラフィックの色が変化するなどの問題が発生する可能性もありました。

また、拡張モジュールによって「タートルグラフィックス命令」が利用可能となり、LOGO言語風のグラフィック描画が可能でしたが、利用頻度が低かったことから、後期の機種では標準搭載されなくなりました。さらに、日本語処理のための拡張として、NECやサードパーティから複数の日本語BASICが発売されましたが、内部文字コードが異なるため、互換性には注意が必要でした。これらの日本語BASICは、通常のBASICコマンドで日本語文字列を扱うことを可能にしたものでした。

PC-88VAシリーズでは、「N88-日本語BASIC V3」が標準搭載されました。V2までとは上位互換性が一部異なるものの、ハードウェアのCRTCが2バイト文字テキストに対応したことで、PC-88VAでは広く利用されるようになりました。日本語の表示やファイル入出力に加え、マウスやメニューバー、アニメーション再生などの機能も提供されていました。

PC-9800シリーズにおけるN88-BASIC



[PC-9800シリーズ]]では、N88-BASIC]がROM-[[BASICとして採用されました。「(86)」は、x86系プロセッサを採用していることを示しています。PC-8800シリーズのN88-BASICとの高い互換性を持ちつつ、NECによる独自開発で、マイクロソフトのGW-BASICとは異なる独自路線を歩むこととなりました。マイクロソフトとの間では、互換性確保のためリバースエンジニアリングが行われ、最終的には合意に至っています。

[PC-9800シリーズ]]でもDISK-BASIC版が発売され、ファイルフォーマットPC-8800シリーズのDISK-BASIC互換性がありましたが、BASICの中間コードは異なっていました。その後、日本語入力システムが追加され、N88-日本語BASIC]となりました。[[PC-9800シリーズのCRTCは2バイト文字に対応していたため、広く利用されました。PC-8800シリーズと異なり、明確なバージョン番号の意識は低かったものの、ハードウェアの追加やシステム拡張に伴い、機能強化が続けられました。

MS-DOS版とWindows版



[PC-9800シリーズ]]のMS-DOS環境への移行に伴い、N88-日本語BASIC]の[[MS-DOS版が発売されました。MS-DOS文字コード体系に合わせて、スタンドアロン版で同時に扱えたセミグラフィック文字と2バイト文字の扱いが変更されました。また、MS-DOS版にはBASICコンパイラが用意されていましたが、すべてのプログラムがコンパイルできるとは限りませんでした。

MS-Windows版であるN88-[BASIC]も存在しましたが、動作速度の遅さや画面周りの互換性の低さから、普及には至りませんでした。

N88-BASIC互換BASIC



その後も、N88-BASICの資産を活かすための様々な互換BASICが登場しました。EPSON PCシリーズ用のEPSON DISK BASIC、Windows環境向けのBASIC/98、99Basic、N88互換BASICなど、様々な開発者によって互換BASICが開発・提供されました。これらのBASICは、N88-BASICとの互換性レベルや動作速度に違いがありました。

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