NAFO (集団)

NAFO（北大西洋同志機構）とは

NAFO（North Atlantic Fellas Organization、北大西洋同志機構）は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を背景に、ロシアのプロパガンダや偽情報に対抗するために結成されたインターネットユーザーの有志団体です。その名称は、北大西洋条約機構（NATO）のパロディであり、ユーモラスな側面を強調しています。NAFOは、単なるオンラインコミュニティではなく、情報戦における独自の戦術を展開する集団として注目されています。

NAFOの活動

NAFOの主な活動は、SNS上で親ウクライナ的、反ロシア的なミームや、ロシアのプロパガンダに対する低俗な返信（いわゆる「クソリプ」）を投稿することです。彼らは、ユーモラスな編集画像（「クソコラ」）を駆使し、ロシアの情報戦を無力化しようと試みています。また、NAFOは単なる情報発信にとどまらず、ウクライナ軍や親ウクライナ運動のための資金調達活動も積極的に行っています。

NAFOの参加者は「Fella（仲間）」と呼ばれ、戯画化された柴犬のキャラクターで表現されます。柴犬の画像がアバターとして頻繁に利用されるのも特徴です。エコノミスト誌は、NAFOの活動を「一見軽薄だが、実際には情報戦の一環として非常に成功している」と評価しています。

NAFOの手法

NAFOは、ウクライナの戦場を記録した画像にFellaの画像を合成したり、ウクライナ軍が投稿する動画にFellaを加えたりします。これにより、戦争の悲惨な現実の中にユーモラスな要素を紛れ込ませ、ロシア軍を嘲笑しつつウクライナ兵を称えています。この画像の作成は、34人の作業者からなる分散ネットワークによって行われています。

ロシアの情報戦は、人々の意識を変えることよりも、混乱と憎悪を生み出すことに重点を置いているとされます。これに対し、NAFOは低俗な投稿をぶつけることで、ロシア側のプロパガンダを無意味化しようとしています。この手法は、過去の事例であるISILクソコラグランプリと同様に、相手のプロパガンダを低品質なコンテンツで汚染することで影響力を低下させることを目的としています。ただし、この手法は荒らし行為の一種であるという指摘もあります。

NAFOの歴史

NAFOの起源は、2022年5月にTwitterアカウント@Kama_Kamiliaが、ウクライナから発信された写真に戯画化された柴犬のキャラクターをコラージュしたことに遡ります。その後、2022年5月24日にTwitter上でNAFOが正式に結成されました。柴犬が2010年代以降のオンラインカルチャーで人気を博してきたことが、NAFOの活動を支える土台となっています。

NAFOの結成後、Kamaは親ウクライナ運動に寄付した人々にカスタムFellaを作成して提供し始めました。2022年8月31日時点で、NAFOはジョージア軍団のために40万米ドル以上を調達しました。

2022年6月には、ロシアの外交官ミハイル・ウリヤノフが、柴犬の画像をアバターにするFellaたちとの間でリプライ合戦を繰り広げ、NAFOの存在が広く知られるようになりました。ウリヤノフは、2022年のロシアの侵略は、ウクライナが2014年以来ドンバスで民間人を砲撃しているという疑惑によって正当化されると主張しました。これに対し、Fellaたちは、ウクライナはロシアの侵略から自衛していると反論し、ウリヤノフの発言を茶化しました。特に、あるFellaがウリヤノフの発言を意図的に論理破綻しているかのように要約したことに対し、ウリヤノフが「You pronounced this nonsense. Not me.」と反論したことが、ミーム化して広まりました。

2022年8月、NAFOは、ウクライナの砲弾にメッセージを載せることができるWebサイト「SignMyRocket.com」のために資金調達を行いました。その結果、ウクライナ軍の装備にNAFOのミームである「Superbonker 9000」などの文字列が記載されるに至りました。また、「防空網は何してる？」というスローガンも、ロシアの防空システムの失敗を嘲笑するミームとして人気を博しています。

NAFOの影響

アメリカのメディア研究家であるJaime Cohen教授は、NAFOを「対国家の実戦的戦術の一種」と評しています。ジャーナリストのOz Katerjiは、NAFOが「ロシアのプロパガンダを妨害し、ロシア支持者を愚かで滑稽に見せた」と述べています。ウクライナのオーストラリア・ニュージーランド大使Vasyl Myroshnychenkoは、NAFOの強みは、その草の根的で分散的な性質にあると指摘しています。また、NAFOの活動は、インターネット文化がどのように武器化されてきたかを学ぶ上で、重要な事例であるとされています。

ウクライナ国防省は、公式TwitterアカウントでNAFOへの感謝を表明し、国防相のオレクシー・レズニコウは、TwitterのアバターをFellaの画像に変更しました。その他にも、多くのアメリカの政治家や軍人が、NAFOに敬意を表してアバターをFellaに変更しています。

NAFOは、情報戦において、ユーモアとミームを駆使し、ロシアのプロパガンダに対抗する独自の戦術を展開しています。その活動は、単なるエンターテイメントではなく、情報戦における重要な要素として認識されつつあります。

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