NASAMS

NASAMS（ナサムス）

NASAMS（National/Norwegian Advanced Surface to Air Missile System）は、米国とノルウェーの共同開発による中高度防空ミサイルシステムです。このシステムは、空対空ミサイルであるAIM-120 AMRAAM、AIM-9 サイドワインダー、IRIS-Tを地上から発射することを可能にするものであり、地上に配備できる形のミサイルシステムとしては初めてのものであります。さらに、NASAMSは分散型ネットワークを利用した防空能力の強化を図っています。

開発の経緯

NASAMSの開発は、ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス＆エアロスペース社と米国のレイセオン社がチームを組み、ノルウェー軍との協力により進められました。1998年に正式に実戦配備が行われましたが、おおよそ1995年から配備の準備が整っていたとされています。1990年代後半までのノルウェー軍の防空策は「Norwegian Solution（NORSOL）」と呼ばれ、対空防衛システムは3種類の兵器システムで構成されていました。これらはボフォース 40mm機関砲（エリコンFCS2000ドップラー・レーダーを使用）、RBS 70 MANPADSシステム、そしてNASAMSであり、各システムは有線および無線通信を通じてARCS（Acquisition Radar and Control System）に統合されています。ARCSは情報伝達を維持し、味方の航空機間での誤射を防ぐ仕組みを備えています。

ノルウェー空軍とKDI（Kongsberg Defence Industries）はNASAMSの中期アップデート版であるNASAMS2を製造し、2006年にノルウェー空軍への引渡しが行われました。このバージョンの特徴として、地上レーダーの強化と、リンク16を使用する能力の導入が挙げられます。NASAMS2は2007年から実戦配備が始まりました。特に、2022年のロシアのウクライナ侵攻時には、ウクライナへの防空支援としてNASAMSが提供され、大きな注目を集めました。

システムの機能

NASAMSは、米国製のAN/MPQ-643レーダー、ノルウェー製の火器管制システム(Fire Distribution Center: FDC)を備えています。このFDCは、TPQ-36Aレーダーと統合されてARCSを構成し、ミサイルの指示を行います。このシステムによって、NASAMSは25kmを超える射程での迎撃が可能です。

現在の運用国とその状況

NASAMSは世界中の多くの国で運用されています。例えば、オーストラリアは2017年にNASAMS-3を購入し、現地生産を進めており、2022年に初の発射機を受領しました。また、チリやフィンランド、ハンガリーもそれぞれNASAMSを導入しています。特に、ウクライナは2022年にNASAMS2基を供与され、その性能について評価されています。

一方で、クウェートや台湾はNASAMSの調達を検討しており、ルーマニアやスロバキアもNASAMSの導入を模索しています。これらの国々は防空能力の向上を目指し、さまざまなシステムとともにNASAMSに興味を示しています。

なぜNASAMSが注目されるのか

NASAMSの特筆すべき点は、その柔軟な運用性と改良の余地です。分散型ネットワークによるシステムは、敵の攻撃に対する迅速かつ効果的な反応を可能にし、戦場での生存性を高めています。また、さまざまな国に導入されることで、国際的な防衛協力の枠組みを育む役割も果たしており、防空ミサイルシステムの中で非常に重要な位置を占めています。

実際、ホワイトハウスの防衛でもNASAMSが用いられるなど、その重要性はますます高まっています。2006年には特別な任務のためにワシントンD.C.の防空にも配備されたとの報告があり、その後もその機能と信頼性が確認されています。

このように、NASAMSは単なる防空システムに留まらず、国際的な安全保障の一翼を担っている存在として注目されています。

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