NEM (暗号通貨)
NEM（ネム）は、分散化、経済的な自由、平等といった原則に基づいた新しい経済の枠組みを確立することを目指して開発されたブロックチェーンプロジェクトです。2015年3月31日にメインネットが開始され、ネイティブ通貨としてXEM（ゼム）が利用されています。NEMは、P2Pセキュアなマルチシグ（多重署名）アカウント、暗号化メッセージングシステム、Eigentrust++評判システムといった高度な機能を備えています。電子署名アルゴリズムにはED22519を採用しています。
また、NEMの機能をアップグレードした後継ブロックチェーンとしてSymbolが存在します。NEMは将来的にSymbolのサブチェーンとして統合される予定です。
NEMの開発は、2014年1月19日にNxtに触発されたBitcoin TalkフォーラムユーザーのUtopianFutureによって開始が呼びかけられ、Jaguar、Gimre、BloodyRookieらの手によって進められました。同年6月25日にオープンアルファテスト、10月20日にオープンベータテストが開始され、2015年3月31日にメインネットが公開されました。メインネットのジェネシスブロックは3月29日に生成されています。2016年11月1日には、新型ウォレット「Nanowallet」がオープンソースとして公開されました。2017年3月には、NEMの導入、教育、普及を国際的に行うことを目的とした「NEM財団」がシンガポールで設立されました。
2018年1月26日には、仮想通貨取引所コインチェックからXEMが大量に流出する事件が発生しましたが、同年3月には流出した全額が返金されています。2020年4月にはNEM財団が解散し、「NEMグループ（NEM Group Ltd.：NGL）」が設立されました。2020年7月23日には、リトアニア中央銀行がNEMブロックチェーンを利用した世界初のCBDC「LBCoin」を発行しました。2021年11月5日には、ハードフォーク「Harlock（ハーロック）」の実施が発表され、日本時間12月1日に完了しました。
NEMの内部通貨として「XEM」が規定されており、総発行量は約90億(8,999,999,999)XEMです。これはNEMが公開された際に全て発行済みであり、今後新規発行されることはありません。XEMは、取引手数料の支払いや、ハーベストと呼ばれる取引承認作業を行った人への報酬として使用されます。
NEMはコンセンサスアルゴリズムとしてProof-of-Importance（PoI）を採用しており、ブロックを生成するプロセスをハーベストと呼びます。PoIでは、NEMアカウントの重要度（インポータンス）が所有しているXEMの数と、ウォレット間の取引数や取引額によって決定されます。約1分ごとにブロックに含まれる手数料が、重要度に応じてウォレットにランダムに配分されます。ただし、配分される権利は、NEMアカウントの既得バランスが10,000XEM以上の保有アカウントに適用されます。
NEMでは、トークンを発行する機能があり、そのトークンは「モザイク」と呼ばれます。内部通貨XEMもモザイクの一種であり、初期から組み込まれているトークンです。トークンを作成するには、ネームスペース領域でドメイン名を生成し、その下にモザイクを作成する必要があります。モザイクには、以下の属性が設定できます。
Description（説明）：モザイクの説明文
Divisibility（可分性）：モザイクを小数点まで分割できるかどうか
Information（情報）：プロパティに含めることができる任意のバイト配列
Namespace（名前空間）：NEMにおけるドメイン名
Name（名前）：モザイクの名称
Mutable quantity（可変発行量）：流通させるモザイクの総量
Transferability（譲渡性）：誰と譲渡できるかを設定
Levy（課徴金）：モザイクの取引における手数料を設定
マルチシグとは、複数の当事者による署名機能です。NEMでは、指定されたウォレットからの署名が全て揃うまでトランザクションがウォレットに保存され、ネットワークにブロードキャストされません。トランザクションは署名されてノードに送信されると、メモリに保存され、残りの署名者によって署名される仕組みになっています。この一連の仕組みはブロックチェーン上で完結します。
マルチシグ機能には、以下の特徴があります。
M of N 機能：N人が署名権限を持ち、そのうちM人以上が揃えば署名できる機能
署名者の追加と削除
TTLトランザクション：トランザクションに署名できる有効期間（最大24時間）
これにより、ウォレットがハッキングされて秘密鍵が漏洩しても、他の署名者が署名しない限り、XEMなどのトークンを送信できなくなります。
NEMはウェブベースのアーキテクチャを採用しています。各ノードはWebサーバー、データベース、コアアプリケーションで構成され、各アカウントはこれらを利用してハーベストや取引記録の保存を行います。これらのノードは「NEM Infrastructure Server（NIS）」と呼ばれます。各ノードはP2Pの接続形態で相互に同期します。ウォレットはクライエントとして動作し、APIを通じてノードに接続する仕組みとなっています。つまり、クライアントとサーバーが分離して処理を行います。
NEM Walletは、NEMの公式ウォレットであり、XEM、モザイク、メッセージの送受信が可能です。また、ハーベストの設定、オンチェーンマルチシグ、ネームスペースの登録とモザイクの作成、NEMを使ったDNSサービス、アポスティーユ公証サービスなども利用できます。
NEMは評判システムとしてEigentrust++を採用し、ネットワーク内のノードの過去の動作を監視することでノードを管理します。これにより、信用できないノードは拒否され、無視されるようになっています。
ビットバンク株式会社＆『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会; 馬渕邦美監修『ブロックチェーンの衝撃―ビットコイン、FinTechからIoTまで社会構造を覆す破壊的技術―』日経BP社、2016年、265-291頁。ISBN 978-4-8222-3659-5。
コインチェック暗号通貨流出事件
バーチャル美少女ねむ
Symbol (ブロックチェーン)
NEM （英語）
NEM NIS1 platform (英語)
NEM Japan （日本語）
『NEM』 - コトバンク
NEM - BitcoinWiki (英語)
また、NEMの機能をアップグレードした後継ブロックチェーンとしてSymbolが存在します。NEMは将来的にSymbolのサブチェーンとして統合される予定です。
歴史
NEMの開発は、2014年1月19日にNxtに触発されたBitcoin TalkフォーラムユーザーのUtopianFutureによって開始が呼びかけられ、Jaguar、Gimre、BloodyRookieらの手によって進められました。同年6月25日にオープンアルファテスト、10月20日にオープンベータテストが開始され、2015年3月31日にメインネットが公開されました。メインネットのジェネシスブロックは3月29日に生成されています。2016年11月1日には、新型ウォレット「Nanowallet」がオープンソースとして公開されました。2017年3月には、NEMの導入、教育、普及を国際的に行うことを目的とした「NEM財団」がシンガポールで設立されました。
2018年1月26日には、仮想通貨取引所コインチェックからXEMが大量に流出する事件が発生しましたが、同年3月には流出した全額が返金されています。2020年4月にはNEM財団が解散し、「NEMグループ（NEM Group Ltd.：NGL）」が設立されました。2020年7月23日には、リトアニア中央銀行がNEMブロックチェーンを利用した世界初のCBDC「LBCoin」を発行しました。2021年11月5日には、ハードフォーク「Harlock（ハーロック）」の実施が発表され、日本時間12月1日に完了しました。
特徴
XEM
NEMの内部通貨として「XEM」が規定されており、総発行量は約90億(8,999,999,999)XEMです。これはNEMが公開された際に全て発行済みであり、今後新規発行されることはありません。XEMは、取引手数料の支払いや、ハーベストと呼ばれる取引承認作業を行った人への報酬として使用されます。
ハーベスト
NEMはコンセンサスアルゴリズムとしてProof-of-Importance（PoI）を採用しており、ブロックを生成するプロセスをハーベストと呼びます。PoIでは、NEMアカウントの重要度（インポータンス）が所有しているXEMの数と、ウォレット間の取引数や取引額によって決定されます。約1分ごとにブロックに含まれる手数料が、重要度に応じてウォレットにランダムに配分されます。ただし、配分される権利は、NEMアカウントの既得バランスが10,000XEM以上の保有アカウントに適用されます。
トークン資産管理機能
NEMでは、トークンを発行する機能があり、そのトークンは「モザイク」と呼ばれます。内部通貨XEMもモザイクの一種であり、初期から組み込まれているトークンです。トークンを作成するには、ネームスペース領域でドメイン名を生成し、その下にモザイクを作成する必要があります。モザイクには、以下の属性が設定できます。
Description（説明）：モザイクの説明文
Divisibility（可分性）：モザイクを小数点まで分割できるかどうか
Information（情報）：プロパティに含めることができる任意のバイト配列
Namespace（名前空間）：NEMにおけるドメイン名
Name（名前）：モザイクの名称
Mutable quantity（可変発行量）：流通させるモザイクの総量
Transferability（譲渡性）：誰と譲渡できるかを設定
Levy（課徴金）：モザイクの取引における手数料を設定
オンチェーンマルチシグ
マルチシグとは、複数の当事者による署名機能です。NEMでは、指定されたウォレットからの署名が全て揃うまでトランザクションがウォレットに保存され、ネットワークにブロードキャストされません。トランザクションは署名されてノードに送信されると、メモリに保存され、残りの署名者によって署名される仕組みになっています。この一連の仕組みはブロックチェーン上で完結します。
マルチシグ機能には、以下の特徴があります。
M of N 機能：N人が署名権限を持ち、そのうちM人以上が揃えば署名できる機能
署名者の追加と削除
TTLトランザクション：トランザクションに署名できる有効期間（最大24時間）
これにより、ウォレットがハッキングされて秘密鍵が漏洩しても、他の署名者が署名しない限り、XEMなどのトークンを送信できなくなります。
アーキテクチャ
NEMはウェブベースのアーキテクチャを採用しています。各ノードはWebサーバー、データベース、コアアプリケーションで構成され、各アカウントはこれらを利用してハーベストや取引記録の保存を行います。これらのノードは「NEM Infrastructure Server（NIS）」と呼ばれます。各ノードはP2Pの接続形態で相互に同期します。ウォレットはクライエントとして動作し、APIを通じてノードに接続する仕組みとなっています。つまり、クライアントとサーバーが分離して処理を行います。
NEM Wallet
NEM Walletは、NEMの公式ウォレットであり、XEM、モザイク、メッセージの送受信が可能です。また、ハーベストの設定、オンチェーンマルチシグ、ネームスペースの登録とモザイクの作成、NEMを使ったDNSサービス、アポスティーユ公証サービスなども利用できます。
ノード評価システム
NEMは評判システムとしてEigentrust++を採用し、ネットワーク内のノードの過去の動作を監視することでノードを管理します。これにより、信用できないノードは拒否され、無視されるようになっています。
脚注
参考文献
ビットバンク株式会社＆『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会; 馬渕邦美監修『ブロックチェーンの衝撃―ビットコイン、FinTechからIoTまで社会構造を覆す破壊的技術―』日経BP社、2016年、265-291頁。ISBN 978-4-8222-3659-5。
関連項目
コインチェック暗号通貨流出事件
バーチャル美少女ねむ
Symbol (ブロックチェーン)
外部リンク
NEM （英語）
NEM NIS1 platform (英語)
NEM Japan （日本語）
『NEM』 - コトバンク
NEM - BitcoinWiki (英語)
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