NWP-20

NECの革新的日本語ワードプロセッサ：NWP-20

1980年代初頭、日本のオフィスシーンは大きな転換期を迎えていました。従来のタイプライターから、より高度な文書作成を可能にするワードプロセッサへの移行が始まろうとしていたのです。日本電気（NEC）は、この時代のニーズをいち早く捉え、1980年5月、画期的な日本語ワードプロセッサ、NWP-20を発表しました。これはNECにとって初の日本語ワードプロセッサであり、日本のオフィスワークに大きな影響を与える製品となりました。

NWP-20は、当時としては先進的な技術を数多く搭載していました。まず目を引くのは、14インチの大型CRTディスプレイです。このサイズは、当時のワードプロセッサとしては非常に大きく、快適な作業環境を提供しました。さらに、入力デバイスにはペンタッチ式のタブレットを採用。マウスが登場する前の時代において、この革新的な入力方法は、直感的な操作性を実現し、ユーザーに大きなメリットをもたらしました。

出力デバイスは、レーザープリンターまたはドットインパクト式プリンターを選択可能でした。高精細な印刷を必要とするユーザーはレーザープリンターを、コストを抑えたいユーザーはドットインパクト式プリンターを選択することができました。この柔軟性も、NWP-20の魅力の一つでした。

文字表示能力も、NWP-20の大きな特徴です。標準で3,967文字を表示可能で、オプションを追加することでJIS漢字コードの第1水準・第2水準を含む最大8,499文字を表示することができました。この豊富な文字数は、高度な文書作成に対応できることを示しており、当時のユーザーにとって大きな魅力だったでしょう。

記憶装置には、容量約1MBのフロッピーディスクドライブ（FDD）を3基搭載していました。1MBという容量は、当時の標準から見ると非常に大容量であり、多くの文書を保存することができました。3基搭載することで、データのバックアップも容易に行えました。

NWP-20のキーボードは、当時の和文タイプライターの文字盤と同様の配列を採用していました。これは、和文タイピストがスムーズに操作できるよう配慮したもので、既存のタイピストのスキルを活かすことを重視した設計思想が見て取れます。

NWP-20は、単なるワードプロセッサにとどまらず、NECの「文豪」シリーズの礎となりました。このシリーズは、その後も進化を続け、日本のオフィスワークに貢献し続けました。NWP-20の成功は、NECの技術力と市場ニーズを的確に捉えた製品開発力の高さを示すものであり、日本の情報化社会の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

NWP-20は、後継機であるNWP-20Nへと進化し、より多くのユーザーに利用されることとなります。これらのモデルは、コンピューター博物館などでも展示されており、日本のコンピューター史における重要な存在として認識されています。その存在は、日本のオフィスワークの変遷を語る上で、欠かすことのできないものです。

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