Nano-JASMINE

Nano-JASMINE（ナノ・ジャスミン）

Nano-JASMINEは、日本の国立天文台が開発した超小型人工衛星であり、特に恒星の位置を高精度で測定することを目的としています。この衛星はその軽量さ（35kg）を活かし、太陽同期軌道からの観測を通じて、恒星までの距離や固有運動を明らかにすることを目指していました。2022年に打ち上げが計画されていましたが、最終的には実施には至りませんでした。

概要

Nano-JASMINEは日本初の位置天文衛星であり、宇宙空間から恒星の位置測定を行うことで、特に大気の影響を受けない精度の高いデータを提供することを目指しています。打ち上げが実現すれば、欧州宇宙機関が1989年に打ち上げたヒッパルコスに続く、世界で二番目の位置天文衛星となる予定でした。しかし、2013年12月に欧州宇宙機関が打ち上げたガイア衛星により、この計画は見直され、日本における第1衛星として位置付けられました。さらに、将来的にはより大型の「小型JASMINE」や「JASMINE」といった衛星が計画されており、その技術検証が主な目的の一つとなっていました。

設計・技術

Nano-JASMINEは一辺50cmの立方体形状を持ち、35kgの質量を特徴としています。精度の高い観測を実現するため、衛星には二つの観測開口部が設けられ、異なる角度から同時に観測する工夫がなされています。これにより、衛星の観測精度は向上し、特にヒッパルコスやガイアと同様の観測手法が適用されています。恒星の光は、口径5cmの赤外線望遠鏡によって集められ、時間遅れ積分（TDI）技術を用い、CCDセンサーに記録されます。さらに、Nano-JASMINEは高い姿勢制御および温度制御の精度が求められる特殊な設計をされています。

この衛星の観測波長は近赤外のzバンド（波長0.9μm）を中心としたもので、様々な波長帯域にわたって観測を行う能力があります。

目的

Nano-JASMINEは科学的成果を期待されるだけでなく、日本の位置天文衛星としての技術検証をも目的としています。小型衛星であるため、欧州宇宙機関のガイア衛星に比べると観測精度は劣ります。しかし、ガイア衛星では観測が難しい明るい恒星についてもデータを取得できるため、新たな観測情報の収集が期待されています。最終的には、Nano-JASMINEによるデータとガイア衛星のデータを統合し、恒星の精密な運動カタログを作成する計画がありました。

打ち上げの経過

当初Nano-JASMINEは2011年8月にブラジルのアルカンタラ射場から打ち上げが予定されていましたが、ロケットや射場の財政問題により、そのスケジュールは度々延期されました。打ち上げは新型ロケットの試験飛行を兼ねて無料で行われる計画でしたが、状況はさらに複雑化し、ウクライナ情勢の影響もあって不透明さが増しました。2015年にはガイア衛星の研究支援を受け、無償で打ち上げることが決まりましたが、結局、衛星の劣化や開発方針の変更により、打ち上げは断念されました。現在、Nano-JASMINEは岐阜かかみがはら航空宇宙博物館にて常設展示されています。

結論

Nano-JASMINEは当初の目的を果たせずに打ち上げを断念しましたが、その開発過程には多くの意義がありました。今後の研究や観測において、その技術が活かされることが期待されます。

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