Next-L Enju

Next-L Enju（ネクストエル エンジュ、槐）は、原田隆史氏と田辺浩介氏を中心に構成されるProject Next-Lによって2007年から開発が進められているオープンソースの統合図書館システムです。

技術基盤

このシステムは、WebアプリケーションフレームワークとしてRuby on Railsを採用し、検索エンジンにはApache Solrが用いられています。データベース管理システム（DBMS）にはPostgreSQLが推奨されています。これらの技術基盤により、APIを通じた他のシステムとの連携（マッシュアップ）や、書誌情報をFRBR（Functional Requirements for Bibliographic Records）形式で構造化し表示することが可能になっています。また、利用者自身がシステムをカスタマイズすることも可能です。

Next-L Enjuは、Amazon EC2やHerokuといったクラウド環境での動作もサポートしており、システムの柔軟性と可用性を高めています。2010年には、国立国会図書館の総合情報探索システム「国立国会図書館サーチ」に採用され、その後、専門図書館、大学図書館、公共図書館へと導入が進んでいます。

歴史

• - 2006年11月：最初の会議が開催され、開発プロジェクトが正式に始動しました。
• - 2007年：Project Next-Lが発足し、図書館システムの開発が本格的に開始されました。
• - 2008年：東京基督教大学図書館でアーカイブシステムとして初めて導入されました。
• - 2009年：国立国会図書館サーチに採用され、その信頼性が証明されました。
• - 2010年：農林水産研究情報総合センターが研究図書館のデータベース検索システムとして初めて採用しました。
• - 2011年：物質・材料研究機構図書館が研究図書館の図書館システムとして採用しました。
• - 2011年11月：南三陸町図書館がクラウド環境として導入し、災害時におけるシステムの有用性を示しました。

システム概要

背景

1970年代には、筑波大学附属図書館の「Tulips」に代表されるように、図書館員が内製で図書館システムを開発することが一般的でした。しかし、1980年代前半にJAPAN/MARC(M)の頒布が開始され、システムベンダーが参入するようになると、パッケージシステムを利用する方向に移行しました。この結果、開発コストは削減されたものの、図書館システムはブラックボックス化し、仕様変更や機能追加が予算やスケジュールの面で困難になるという問題が発生しました。

開発コンセプト

Next-L Enjuの開発は、次世代の図書館システム開発の主導権を図書館関係者自身が取り戻すことを目指しています。オープンソースの利点を活かし、図書館員が共同で図書館システムの仕様を作成し、ニーズに合致した柔軟で拡張性の高いシステムを構築することを目的としています。

システム構成

• - 本体: 資料管理（受入、検索など）、利用者管理、図書館管理といった基本機能を提供します。
• - 機能ごとのモジュール: 貸出・返却、レファレンス、ブックマーク、書誌名寄せ、相互貸借、件名、催し物、お知らせ、検索ログ、メッセージ送信、購入依頼、蔵書点検、NDL接続、機関リポジトリなど、図書館業務に必要な多様な機能がモジュールとして提供されます。
• - OS: Unix系のOSで動作します。
• - アプリケーションソフトウェア: Ruby 1.9.3以上、PostgreSQL 8.4以上、Apache Solr、Ruby on Rails 3.2以上が必須となります。
• - プロトタイプ: 2012年時点では、FRBRに対応した書誌管理システム「enju_root」と図書館管理システム「enju_leaf」が存在していました。「enju_leaf」は、当初OPACの「Enju Flower」と分かれていましたが、「enju_leaf」version1.0.0以降は一本化されています。
• - カスタマイズ: システムは高度なカスタマイズが可能です。
• - 他システムとの連携: WebAPIを通じて、国立国会図書館サーチやGoogleブックスなどの外部システムとの連携が可能です。

脚注

関連項目

• - 統合図書館システム
• - 情報システム
• - オープンソース

外部リンク

• - Project Next-L
• - Project Next-L（GitHub）

もう一度検索