ON THE STREET CORNER

山下達郎『ON THE STREET CORNER』：ドゥーワップへのオマージュと進化

1980年12月5日、山下達郎のソロ名義としては初のアルバム『ON THE STREET CORNER』がリリースされました。この作品は、山下達郎が長年愛してきたドゥーワップ音楽への深い愛情を表現した、全編アカペラによるカバーアルバムとして注目を集めました。

ライブから生まれた名盤

収録されている楽曲は、当初、山下達郎のライブパフォーマンスのためにレコーディングされたもの。次第にレパートリーが増えていく中で、アルバムとしてまとめ上げられることになったという経緯があります。そのため、原曲に忠実なアレンジのものから、山下達郎独自の解釈が大きく反映されたものまで、楽曲ごとに多彩なアレンジが聴けるのが特徴です。このアルバムが、単なるカバー集ではなく、山下達郎の音楽性と創造性を示す作品となったのは、この点にあります。

『RIDE ON TIME』後の新たな挑戦

山下達郎自身は、このアルバムについて、「『RIDE ON TIME』がヒットしたからこそ実現できた作品」と語っています。『RIDE ON TIME』の大ヒットによって得た自由を活かし、長年温めていたドゥーワップへの想いを形にしたと言えるでしょう。商業的な成功という枠を超えて、アーティストとしての純粋な音楽的探求を表現した作品と言えるのではないでしょうか。また、このアルバムは、それまでのファン層と『RIDE ON TIME』で新しく獲得したファン層との間をつなぐ役割も果たしたと山下達郎は考えているようです。

再発と変遷

『ON THE STREET CORNER』は、1986年にシリーズ第2作『ON THE STREET CORNER 2』のリリースを機に『ON THE STREET CORNER 1』として再発され、“'86年版 ('86 VERSION)”と表記されました。さらに2000年にはシリーズ第3作のリリースに合わせ、改めて『ON THE STREET CORNER 1』として再発されています。これらの再発を通して、音質の改善や、初期プレス盤に見られたトラックリストの誤記も修正されています。特に1980年発売のアナログ盤とカセットテープでは、A面2曲目の表記に誤りがあり、後に修正されています。1stプレス(RAL-6501-A)と2ndプレス(RAL-6501-A2)が存在し、ジャケットやレーベルの表記は2ndプレスに準拠している点を留意する必要があります。

参加ミュージシャンと制作陣

このアルバムは、山下達郎自身のヴォーカルが中心ですが、「Close Your Eyes」には吉田美奈子が参加し、アルバムに華を添えています。さらに、多くのミュージシャンが手拍子、指鳴らし、足踏みなど、多彩なパーカッションで楽曲を支えています。レコーディング、ミックス、マスタリングなど、制作に関わったスタッフも豪華な顔ぶれが揃っており、アルバムの高い完成度を支えています。

収録曲

アルバムには、ドゥーワップのスタンダードナンバーが多数収録されており、それぞれの楽曲への深い愛情と解釈が感じられます。どの曲も山下達郎のヴォーカルとアカペラアレンジによって、新たな魅力が加えられています。

まとめ

『ON THE STREET CORNER』は、山下達郎の音楽家としての多面性と、ドゥーワップへの情熱が凝縮された、唯一無二の作品と言えるでしょう。単なるカバーアルバムを超えた、アーティストの真摯な姿勢と創造性が光る、名作中の名盤です。今日でもその魅力は色褪せることなく、多くのリスナーを魅了し続けています。

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