ON THE STREET CORNER 1

山下達郎『ON THE STREET CORNER 1』：アカペラへの挑戦と再発見

1986年、山下達郎によって世に送り出されたアカペラ・アルバム『ON THE STREET CORNER』。そのリイシュー盤として、2000年に『ON THE STREET CORNER 1』がリリースされました。このアルバムは単なる再発ではなく、デジタル・リマスターによる音質の向上と、新たな魅力を加えるボーナス・トラックの追加という、重要なアップデートが施された作品です。

当時、日本ではアカペラやドゥーワップという音楽ジャンルは、まだ一般的に知られていませんでした。山下達郎は、そうした状況下でこのアルバムを制作、発表したのです。「取材やプロモーションのたびにいちいち説明しなければならなかった」という、彼の当時の苦労は容易に想像できます。このアルバムは、時代の先を行く、山下達郎の音楽への情熱と挑戦の証と言えるでしょう。

2000年の再発に際しては、アルバムタイトルが『ON THE STREET CORNER 1』に変更されました。これは、後にリリースされるシリーズ作品との区別を明確にするためです。『ON THE STREET CORNER 2』や『ON THE STREET CORNER 3』と共に、このシリーズは山下達郎の音楽遍歴において独特な位置を占めています。

ボーナス・トラックは通常、アルバムの最後に収録されるのが一般的ですが、『ON THE STREET CORNER 1』では、オリジナル・アナログ盤のA面とB面の間に配置されています。これは、最後の曲「THAT'S MY DESIRE」の配置を変えたくないという、山下達郎自身のこだわりによるものです。楽曲への深い愛情と、作品に対する強い想いが感じられるエピソードと言えるでしょう。

さらに、この再発にはユニークなキャンペーンが展開されました。それは「1+2+3=0」キャンペーン。『ON THE STREET CORNER 1』、『ON THE STREET CORNER 2』、そして『ON THE STREET CORNER 3』の3枚のアルバムに共通のロゴマークが入ったタスキ帯を集めて応募すると、スペシャル・ボーナスCDと、重量盤仕様のアナログ盤『ON THE STREET CORNER 0』がプレゼントされるという企画でした。CDとアナログ盤で収録曲が異なるという工夫も凝らされており、ファンを喜ばせる、抜かりない演出がなされています。

『ON THE STREET CORNER 1』は、単なる再発アルバムという枠を超え、当時の音楽シーンや、山下達郎の音楽に対する姿勢、そしてファンへの想いを伝える、貴重な作品となっています。楽曲の魅力に加えて、制作秘話やキャンペーンといった背景を知ることで、このアルバムの価値はさらに深まります。デジタルリマスターされた高音質で聴くオリジナル曲に加え、新たな魅力を添えるボーナス・トラックは、初めてこのアルバムを聴くリスナーにも、長年ファンとして親しんできたリスナーにも、新鮮な驚きと感動を与えてくれることでしょう。収録されている楽曲の一つ一つに、山下達郎の音楽家としてのこだわりと、時代を超越した魅力が詰まっています。

楽曲リスト:

YOU BELONG TO ME
CLOSE YOUR EYES
SPANISH HARLEM
ALONE
MOST OF ALL
GEE [Bonus Track]
CLOSE YOUR EYES (ALL TATSURO VERSION) [Bonus Track]
REMEMBER ME BABY
BLUE VELVET
THE WIND
DRIP DROP
THAT'S MY DESIRE

このアルバムは、山下達郎の音楽史における重要な1ページを刻む作品であり、アカペラ音楽の魅力を再発見する機会となるでしょう。

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