OPSEK

OPSEK（オプセック）は、2010年代にロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）が提案した、国際宇宙ステーション（ISS）に続く新たな宇宙ステーションの構想です。正式名称であるロシア語の「軌道有人組立実験複合体」が示す通り、地球低軌道にモジュール方式の有人施設を構築し、将来の宇宙活動の拠点とすることを目指していました。計画の初期段階では、ISSのロシア区画の一部モジュールを転用し、これを基礎としてステーションを構築する考えが示されていました。

ISSの将来的な運用終了を見据え、ロシアはISSに依存しない独自の宇宙ステーションを確保する必要性を認識し、ISSの設計段階から存在した新型モジュール『ナウカ』などを将来的な新ステーションの基礎とする構想を持っていました。2009年には、ロシアはISSパートナー国に、後継ステーションの要素準備を進める意向を伝達しています。

OPSEK構想における主要な目的は、月や火星といった遠方の天体を目指す大型有人宇宙船を軌道上で組み立て・準備する基地としての機能、そして長期間の宇宙滞在から帰還した宇宙飛行士のためのリハビリテーション施設としての役割でした。RKKエネルギア社は、大型宇宙機の組立や軌道間輸送機の運用、飛行士のリハビリ設備といった能力が必要だと提言していました。

OPSEKは、ロシアがサリュートからミールへと築いてきた宇宙ステーション開発の歴史に連なる、ミール以降の『モジュール型宇宙ステーション』に分類されます。モジュール型は、多様な機能を持つモジュールを後から接続することで、ステーションの能力を拡張したり、長期運用中のミッションの変化に対応したりすることが可能です。OPSEKも、ISSのロシア区画にある既存モジュールや新規開発モジュールを組み合わせることで、その機能を構築する計画でした。

OPSEK構想では、ISSのロシア区画からズヴェズダやポイスクといったモジュールを転用し、これに新規開発モジュールを加える計画でした。特に中心的な役割を担うはずだったのは、ロシアの主要な研究モジュールとなるナウカと、多数のドッキングポートを持つ接続ハブとなるナーダルモジュールです。

しかし、OPSEK構想は提唱された形では実現しませんでした。2017年、ロシアの宇宙当局はISSからのモジュール分離計画を否定し、ISSでの国際協力を継続する方針を明確にしました。これは、ISSモジュールを分離してOPSEKを構築するという当初のアイデアが実現困難になったことを示唆しています。その後もISSからのロシア撤退が議論されることはありましたが、最終的にロシアは2028年までISS計画に参加することを決定しました。ナウカなどの新規モジュールはISSに接続され、ロシアの宇宙活動を支えています。OPSEKは、ロシアがかつて描いたISS後継ステーションのビジョンとして、宇宙開発史にその名を留めることとなりました。

もう一度検索