On-Uサウンド

On-Uサウンドは、プロデューサーであるエイドリアン・シャーウッド氏によって1979年に立ち上げられた、イギリスを拠点とする革新的なレコード・レーベル、そしてサウンド・システムです。シャーウッド氏は、それ以前にレゲエ系のレーベルであるカリブ・ジェムズやヒット・ランの運営に携わった経験を持っており、その知見を活かしてOn-Uサウンドを設立しました。

このレーベルの特徴は、その多様な音楽性にあります。核となるのはレゲエやダブのサウンドであり、アフリカン・ヘッド・チャージやダブ・シンジケートといった著名なアーティストたちの作品を数多くリリースしてきました。しかし、その活動範囲はこれに留まらず、ニュー・エイジ・ステッパーズやマーク・スチュワートなど、当時のニュー・ウェイヴ・シーンで活躍していた個性的なアーティストたちの作品も積極的に手掛けています。このジャンルを横断するアプローチは、On-Uサウンド独自の音響世界を形成する上で重要な要素となっています。

レーベルの名前である「On-Uサウンド」は、設立者であるエイドリアン・シャーウッド氏の友人「ONUS」にちなんで名付けられたと言われています。同時に、この名称には「重要である」といった意味合いも込められているとされており、彼らの音楽制作に対する姿勢や、音楽シーンにおける自身の存在意義を示唆しているのかもしれません。

On-Uサウンドが初めて世に送り出した作品は、1980年にリリースされたニュー・エイジ・ステッパーズとロンドン・アンダーグラウンドによるスプリット・シングル「Fade Away / Learn A Language」でした。これは7インチ・レコードとして発表され、レーベルの記念すべき第一歩となりました。続く1981年には、同じくニュー・エイジ・ステッパーズによるセルフタイトル・アルバム『ニュー・エイジ・ステッパーズ』が、レーベル初のアルバムとしてリリースされました。

その活動の中で、On-Uサウンドはいくつかの特筆すべき商業的成功や、著名なアーティストとのコラボレーションも実現しています。1984年には、世界的に大きな成功を収めたイギリスのシンセポップバンド、デペッシュ・モードのヒット曲「People Are People」の12インチ・シングルに、On-Uサウンドによる独創的なリミックス・バージョンが収録されました。このリミックスは、本国イギリスのシングルチャートで4位、アメリカのビルボード・ホット100で13位を記録した原曲の成功に貢献し、On-Uサウンドの名前をより広く知らしめる機会となりました。

また、レゲエ界の伝説的なプロデューサーであるリー・ペリーとも数多くの共同作業を行っており、1987年にはリー・ペリーとダブ・シンジケート名義でのアルバム『Time Boom X De Devil Dead』をリリースするなど、レゲエ/ダブの本流との繋がりも深く保ち続けています。

さらに、1991年には、ゲイリー・クレイル & On-Uサウンド・システム名義で発表したシングル「Human Nature」が、全英シングルチャートで10位を記録するヒットとなりました。また、日本のダブ・バンドであるaudio activeもOn-Uサウンドから作品をリリースしており、1994年のシングル「Free The Marijuana」は、イギリスの音楽雑誌NMEによるDJチャートで1位を獲得するなど、国際的な活動も展開しています。

On-Uサウンドは、設立以来、エイドリアン・シャーウッド氏のユニークなプロデュース手腕とサウンド・システムとしての実験精神に基づき、既存のジャンルに囚われない革新的な音楽を創造し続けています。その影響は広く、特にダブやレゲエをベースとしたサウンドに新たな可能性を示し、その後の多くの音楽家たちにインスピレーションを与えています。レコード・レーベルとしての作品リリースに加え、サウンド・システムとしてライブ活動も行い、その独自の音響体験を提供しています。これは、単なる音源の発表にとどまらず、音を物理的な体験として提示しようとする彼らの姿勢を表しています。このように、On-Uサウンドは単なる音楽レーベルではなく、一つの文化的な存在として、現代の音楽シーンにおいて重要な位置を占めています。

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