P-トルエンスルホン酸

p-トルエンスルホン酸（パラ-トルエンスルホン酸）

p-トルエンスルホン酸、通称トシル酸は、芳香族スルホン酸の一種で、化学式はC₇H₈O₃Sです。別名4-メチルベンゼンスルホン酸とも呼ばれ、一般的にPTSA、TSA、またはTsOHという略称が用いられます。この物質は常温では白色の結晶性固体として存在し、主に一水和物として市販されています。また、水や多くの有機溶媒に溶けやすく、水溶液のために強い酸性を示す特徴があります。

製法

p-トルエンスルホン酸は、トルエンを濃硫酸または発煙硫酸を用いてスルホン化することによって合成されます。この過程で、オルト体も副生成物として生成されるため、これがサッカリンの原料となることもあります。

用途

この酸性の性質と水溶性により、p-トルエンスルホン酸は有機合成において非常に重要な酸触媒として使用されます。特に、その陰イオンであるトルエンスルホナートアニオン（CH₃C₆H₄SO₃⁻）は求核性が低く、安定性が高いため、優れた脱離基としても評価されています。具体的には、アルコールのヒドロキシ基を求核種で置換したい場合、最初にヒドロキシ基をp-トルエンスルホン酸エステル（トシラート）に変換し、その後に求核剤を加えることでトシル基と求核種の置き換えが行われます。

また、水酸化ナトリウムで中和することでナトリウム塩が生成されます。このナトリウム塩に五塩化リンを作用させることで、塩化パラトルエンスルホニルを得ることが可能です。次の反応式はそのプロセスを表しています。

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p–CH₃C₆H₄SO₃Na + PCl₅ → p–CH₃C₆H₄SO₂Cl
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さらに、p-トルエンスルホン酸のピリジニウム塩であるパラトルエンスルホン酸ピリジニウム（略称PPTS）も、穏和な酸触媒として有機合成で広く利用されています。また、医薬品の製剤化においても重要な役割を果たしており、例えば直接第Xa因子を阻害するエドキサバンや、抗アレルギー薬のスプラタストは、p-トルエンスルホン酸との塩の形で用いられることが多いです。

このように、p-トルエンスルホン酸はその多様性と強酸性から、化学のさまざまな分野で重要な役割を果たしています。

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