トルエン

トルエンについて

概要

トルエン（英: Toluene）は、芳香族炭化水素で構成された有機化合物で、ベンゼンの水素原子の1つがメチル基によって置き換わっています。この無色透明の液体は、主要な溶媒として広く利用されています。水には非常に溶けにくいですが、アルコールや油類には優れた溶解能力があります。また、常温では揮発性を持ち、引火性があるため取り扱いには注意が必要です。日本では、トルエンは毒物及び劇物取締法により劇物に指定されており、管理濃度は20ppmとされています。

歴史

トルエンという名前は、南アメリカに生育するMyroxylon balsamumの樹脂から得られたトルーバルサムに起因しています。この名は、イェンス・ベルセリウスによって命名されました。

化学的性質

トルエンは、そのメチル基の影響によりベンゼンよりも25倍も高い反応性を示します。無色で特有の臭いを持っており、沸点は約111度、融点は約−95度です。その比重は水を1とした場合、0.87です。

トルエンはスルホン化によってp-トルエンスルホン酸を生成し、酸化鉄(III)の存在下では塩素化反応を行い、オルト・パラアイソマーのクロロトルエンを作り出します。ニトロ化を行うことでオルト・パラアイソマーのニトロトルエンが生成されますが、加熱により、爆薬として知られるトリニトロトルエン(TNT)に至ります。さらに、トルエンは多様な反応試剤と反応し、さまざまな化合物になります。

製造

トルエンは原油の中にも微量含まれていますが、一般的にはナフサのエチレンプラントで熱分解、あるいは石炭からコークスを作成する際に得られる粗軽油やコールタールから分離・精製されます。このプロセスで得られる製品は、ベンゼンとトルエン、キシレンから構成され、分留によってそれぞれ分けられ、BTXプラントと呼ばれる施設で処理されます。2016年度の日本における純トルエンの生産量は約198万トンであり、工業用消費量としては100万トンを超えています。

用途

トルエンは多種多様な用途を持ち、主に溶媒として使用され、ペンキや塗料、化学物質、ゴム、印刷インク、接着剤、さらにはマニキュアや皮なめし、殺菌剤などに関与しています。また、トルエンジイソシアナートなどの原料や内燃機関におけるオクタン価向上剤としても利用され、爆薬の製造にも必要不可欠な物質です。近年では地球温暖化対策として水素との反応により、メチルシクロヘキサンを生成する技術も注目されています。

毒性と代謝

トルエンの蒸気を吸入すると中[[毒]]症状を引き起こし、長期的に吸入し続けると回復不可能な脳障害を発症することが確認されています。さらに、トルエンが土壌や地下水に浸透することで、経皮的または経口的に体内に侵入するリスクもあります。建材に含まれるトルエンは室内に放出され、シックハウス症候群の原因物質ともされています。

トルエンは体内で代謝され、主にベンジルアルコールや安息香酸に変換され、最終的に尿として排出されます。このことから、尿中の馬尿酸の存在がトルエン曝露の指標とされることもあります。日本の食品安全委員会では、耐容一日摂取量を体重1kg当たり149μgと設定しています。

結論

トルエンは非常に多彩な性質を持ち、化学工業において不可欠な物質である一方、その毒性や環境への影響についても考慮する必要があります。取り扱いや使用に際しては、十分な注意が求められます。

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