P-66 (航空機)

P-66 ヴァンガード

P-66 ヴァンガードは、アメリカ合衆国のバルティ社が開発した戦闘機で、第二次世界大戦前の1939年から製造が始まりました。この機体は、当初はスウェーデンへの輸出を目的として設計されましたが、最終的には他の目的で使用されることになりました。

開発の経緯

1939年、バルティ社は主任設計者リチャード・W・パルマーのもとで、モデル48という社内名称を持つ輸出向け単座戦闘機の開発に着手しました。この機体は、P&W R-1800-33空冷二重星型エンジンを搭載する予定であり、液冷エンジンを使用した機体と同様の絞り込んだ機首を特徴としていました。また、空気抵抗を抑えるための工夫も行われました。

試作機は1939年9月に初飛行し、その後の試験では冷却不足や重量の問題に悩まされました。これにより、バルティ社は空気取り入れ口の拡大などの改良を行いましたが、従来の設計に戻すことになりました。最終的に、1940年に改良版のV-48Cが完成し、スウェーデンに144機が発注されました。

生産と配備

ところが、アメリカ政府が中立国への武器輸出を禁止するレンドリース法を制定したため、予定していたスウェーデンへの供給は実現しませんでした。それに代わって、129機がイギリス経由でカナダに供与されることになり、この際にヴァンガードという愛称が与えられました。カナダでは高等訓練機として使用される予定でしたが、イギリスがこれらの機体を中華民国に供給することを決定したため、P-66への改名が行われ、1941年から中国への輸送が始まりました。

しかし、真珠湾攻撃が発生し、数機がアメリカ陸軍航空隊に転用されることになりました。これらの機体は、実戦経験を持たずに高等練習機として運用されましたが、少なからぬ問題が見られました。特に、地上滑走中のスピン事故が多発し、15機が失われました。最終的には、1942年2月に全機が退役し、その後中国に送られました。

中国での運用

中国に供与されたP-66のほとんどはカラチで組み立てられましたが、輸送途中やインドでの訓練中に多くの機体が失われました。結局、国民革命軍への配備は限定的であり、実戦において日本軍と交戦することもありましたが、機体の少なさや運用上の問題により、期待された戦力にはなりませんでした。

当時の日本側でもこの機体の情報が入手され、外観が隼や零戦に類似していたため、誤認されることもありました。実際、アメリカ軍のパイロットの中には、P-66を零戦のコピーだと見なしていた者もいたとのことです。

スペック

- 全長: 8.63 m
- 全高: 2.87 m
- 全幅: 10.97 m
- 翼面積: 18.3 m²
- 自重: 2,376 kg
- 全備重量: 3,221 kg
- エンジン: P&W R-1800-33 空冷星型14気筒 1,200hp
- 最大速度: 547 km/h
- 航続距離: 1,368 km
- 実用上昇限度: 8,595 m
- 乗員: 1名
- 武装: 12.7mm機関銃 × 2（主翼）、7.62mm機関銃 × 4（機首）、爆弾（搭載量不明）

このように、P-66 ヴァンガードは、その設計から生産、運用に至るまで多くの課題に直面しましたが、当時の戦闘機市場において一定の影響を持った機体であったと言えるでしょう。

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