P-T境界

P-T境界の概要

P-T境界（Permian-Triassic boundary）は、約2億5,100万年前に存在した古生代と中生代を区切る重要な地質的境界です。この時期には、地球上で過去最大規模の大量絶滅が発生し、多くの生物種が姿を消しました。

名称の由来

P-T境界という名称は、古生代のペルム紀（Permian）と中生代の三畳紀（Triassic）の頭文字を組み合わせたものです。地質学では、新たな生物種が出現する時期を基に時代境界を定義します。しかし、地質学上の時代境界と生物の絶滅期が必ずしも一致するわけではありません。大絶滅の本質は「後期ペルム紀」の絶滅に主に関連していますが、この時期の大量絶滅を指してP-T境界の大絶滅と呼ぶことに異議は少ないです。

大量絶滅の影響

古生代の陸上生物は、両生類や単弓類が中心であり、中生代は恐竜に象徴される爬虫類の時代とされます。P-T境界では、これらの生物相の大規模な交代が起こりました。特に海生無脊椎動物の絶滅率は、種レベルで90%以上、属レベルで80%、科レベルで50%に達しました。これには、三葉虫や古生代型サンゴ、フズリナなど、古生代に幅広く存在していた生物が含まれます。脊椎動物でも、82%の科が消失し、昆虫や植物などの陸上生物も多数が絶滅しました。この大絶滅は、カンブリア紀以降で最も深刻なものであり、今なお原因には多くの仮説が存在します。

絶滅年代と原因

1990年代以降、最新の研究技術によってP-T境界の絶滅の年代分析が進みました。その結果、P-T境界の絶滅は、約800万年から1000万年を隔てた2段階に分かれて起こったとの見解が生まれました。最初の絶滅事件が約2億6,000万年前に起こり、もともと海水準が著しく低下したことが原因に挙げられています。

そして、続く事件が、本来の大絶滅を引き起こし、約2億5160万年前から始まったとされる。この時期に、特に礁の形成に関与する生物が大量に死滅し、全地球的に礁が消失しました。詳しい年代測定の結果、絶滅は約2億5160万年前に始まり、続く100万年間にわたって影響を及ぼしたと見られています。

生物多様性の変遷

P-T境界における海洋動物の絶滅は、古生代型動物相の大部分が消失したことに起因しています。例えば、フズリナ族やアンモナイト族は、絶滅前に著しい減少を経験しました。さらに、海洋動物においても、相対的に新しい進化動物相、例えば二枚貝や硬骨魚類は、比較的低い絶滅率を記録しました。

一方、陸上の動物、特に爬虫類や昆虫についても、P-T境界時に重要な変化が見られました。爬虫類はその多様性を一時的に失い、昆虫類はP-T境界で唯一の大量絶滅を経験しました。植物と環境の変化もあり、古生代の湿地帯が長期的に消失したことが観察されています。

絶滅後の生物多様性回復

P-T境界後の生物多様性の回復は極めて遅く、特に400万年後まで種の数が追いつくことはありませんでした。本格的な生物多様性の回復は1,000万年後に始まりましたが、これは続いていた厳しい環境条件が影響していたと考えられています。

結論

P-T境界は、生物多様性と生態系に深刻な影響を与えた出来事であり、地球の進化における重要な分岐点でした。これにより、生物の適応や進化の道筋が大きく変わり、その後数百万年にわたって地球上の生態系に長期的な影響を及ぼしました。今後新たな研究が進むことで、この時期の謎が解明されることが期待されています。

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