P.J.クルック
パメーラ・ジューン・クルック（P.J. Crook）は、1945年にイングランドで生まれた、絵画、アートデザイン、造形など多岐にわたる分野で活躍するアーティストです。彼女は特に、著名なプログレッシブ・ロックバンドであるキング・クリムゾンの印象的なアルバムカバーアートを手がけたことで、国際的にその名を知られています。
クルック氏はイングランドのグロスタシャー州チェルトナムの出身です。地元の美術学校で染織を専攻して学び、卒業後はロンドンでテキスタイルデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。しかし、結婚を機に一時的に仕事を離れ、子育てに専念する期間がありました。この時期、余暇に絵を描いていたことが、彼女の中に眠っていた創作への情熱を再び呼び覚ますきっかけとなり、アーティストとしての道を本格的に歩み始める決意を固めました。
1970年代後半からは、グループ展を通して積極的に作品を発表し始めました。活動の範囲は母国イギリス国内にとどまらず、ロンドンをはじめ、フランス、アメリカ、カナダ、エストニアなど世界各地のギャラリーで個展やグループ展を開催し、国際的な評価を高めていきました。
日本とも特別な繋がりを持っています。1990年代半ば、日本の実業家である諸橋廷蔵氏が彼女の作品を購入したことから交流が始まりました。諸橋氏が福島県に設立した諸橋近代美術館は、クルック氏の作品を多数所蔵しており、2001年からは継続的に作品が展示されています。この2001年の展示に合わせて、クルック氏は初めて日本を訪れました。その後も、同美術館を拠点として2006年、2012年、2016年、2018年と回顧展が開催されています。特に2018年9月には、実に17年ぶりとなる再来日を果たし、諸橋近代美術館で講演を行うなど、日本の芸術ファンとの交流を深めました。
彼女の芸術スタイルは非常に個性的です。絵画の多くは、現代の人々で賑わう場所、群集、人物像などを主題としていますが、動物やファンタジーの世界を描いた作品も手掛けています。技法面では、「半立体的」な表現が大きな特徴です。従来の平面的なキャンバスワークに留まらず、変形したキャンバスを用い、絵を額縁にまで描くことで、見る者に独特の奥行きと視覚的な面白さをもたらします。諸橋近代美術館では、彼女の作品について「自身の体験や記憶に基づいた身近なモチーフを組み合わせ、シュルレアリスティックな光景を描き出す」と紹介しており、現実と非現実が織り交ぜられた独特の世界観が表現されています。
クルック氏はまた、母国イギリスにおける芸術振興にも熱心に貢献しています。ウェスト・オブ・イングランド王立芸術アカデミーをはじめとする複数のアートクラブのメンバーとしても活動し、美術・芸術関連機関を支援しています。母校であるグロスターシャー大学からは名誉博士号が授与され、新設された寮の一つには彼女の姓である「Crook」がその名に冠されるなど、学術的な栄誉も得ています。グロスターシャー州の大使やカレッジの名誉副会長、さらには芸術著作権協会の管理職といった公的な役職も務めるなど、多方面でその影響力は及びます。これらの芸術分野における長年の献身的な活動と顕著な業績が高く評価され、2011年には大英帝国勲章（MBE）を叙勲するに至りました。彼女が支援している主な機関としては、ナショナル・スター大学、Linc（白血病＆化学療法基金）、チェルトナム・オープンスタジオ、Art Shape、ディーン彫刻の森などがあります。
パメーラ・ジューン・クルックは、その独創的な芸術表現と社会貢献の両面において、現代イギリスを代表するアーティストの一人として確固たる地位を築いています。特にキング・クリムゾンのアートワークは、視覚的な側面からバンドの世界観を広げる重要な役割を果たしました。
キング・クリムゾンのカバーアートを提供した主な作品は以下の通りです。
スタジオアルバム
『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』 (The Power to Believe, 2003年)
『ザ・リコンストラクション・オブ・ライト』 (The ReConstruKction of Light, 2019年) - 『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』40周年記念バージョン
ライブアルバム・EP
『エピタフ -1969年の追憶-』 (Epitaph, 1997年)
『ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々-』 (The Night Watch, 1998年)
『アブセント・ラヴァーズ』 (Absent Lovers: Live in Montreal, 1998年)
『サーカス〜ザ・ヤング・パーソンズ・ガイト・トゥ・キング・クリムゾン〈ライヴ〉〜』 (Cirkus: The Young Persons' Guide to King Crimson Live, 1999年)
『ヘヴィ・コンストラクション』 (Heavy ConstruKction, 2000年)
『ヴルーム・ヴルーム』 (Vrooom Vrooom, 2001年)
『レヴェル・ファイブ』 (Level Five, 2001年)
『しょうがない』 (Happy with What You Have to Be Happy With, 2002年)
『レディース・オブ・ザ・ロード』 (Ladies of the Road, 2002年)
『エレクトリック』 (EleKtrik: Live in Japan, 2003年)
『ザ・グレート・ディシーヴァー VOL.1・VOL.2』 (The Great Deceiver, 2007年) - 再発盤
『ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ / レヴェル・ファイヴ / エレクトリック：ライヴ・イン・ジャパン』 (Happy With What You Have To Be Happy With / Level Five / Elektrik, 2021年) - 3作再発盤BOXセット
コンピレーション
The Power to Believe Tour Box（2003年）
『濃縮キング・クリムゾン』 (The 21st Century Guide to King Crimson – Volume One – 1969–1974 / The 21st Century Guide to King Crimson – Volume Two – 1981–2003, 2006年)
『ジ・エレメンツ・オブ・キング・クリムゾン 2015』 (The Elements of King Crimson Tour Box 2015, 2015年)
『ヘヴン&アース 1997-2008』 (Heaven & Earth, 2019年)
ライブビデオ
『デジャ・ブルーム』 (Déjà Vrooom, 1999年)
『アイズ・ワイド・オープン』 (Eyes Wide Open, 2003年)
『ニール・アンド・ジャック・アンド・ミー』 (Neal and Jack and Me, 2004年)
Live in Argentina 1994（2012年）
プロジェクト
プロジェクト1：Live at the Jazz Café（1998年）
プロジェクト3：Masque（1999年）
The ProjeKcts（1999年）
The Deception of the Thrush: A Beginners' Guide to ProjeKcts（1999年）
ア・キング・クリムゾン・プロジェクト：Jakszyk, Fripp and Collins - A Scarcity of Miracles（2011年）
彼女の作品を収めた主な書籍には以下のようなものがあります。
書籍
P.J.Crook: A Retrospective 1980-1995（1996年）
The Dialects of England（2000年）
P J Crook（2003年）
* Leader to Leader（2013年）
クルック氏はイングランドのグロスタシャー州チェルトナムの出身です。地元の美術学校で染織を専攻して学び、卒業後はロンドンでテキスタイルデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。しかし、結婚を機に一時的に仕事を離れ、子育てに専念する期間がありました。この時期、余暇に絵を描いていたことが、彼女の中に眠っていた創作への情熱を再び呼び覚ますきっかけとなり、アーティストとしての道を本格的に歩み始める決意を固めました。
1970年代後半からは、グループ展を通して積極的に作品を発表し始めました。活動の範囲は母国イギリス国内にとどまらず、ロンドンをはじめ、フランス、アメリカ、カナダ、エストニアなど世界各地のギャラリーで個展やグループ展を開催し、国際的な評価を高めていきました。
日本とも特別な繋がりを持っています。1990年代半ば、日本の実業家である諸橋廷蔵氏が彼女の作品を購入したことから交流が始まりました。諸橋氏が福島県に設立した諸橋近代美術館は、クルック氏の作品を多数所蔵しており、2001年からは継続的に作品が展示されています。この2001年の展示に合わせて、クルック氏は初めて日本を訪れました。その後も、同美術館を拠点として2006年、2012年、2016年、2018年と回顧展が開催されています。特に2018年9月には、実に17年ぶりとなる再来日を果たし、諸橋近代美術館で講演を行うなど、日本の芸術ファンとの交流を深めました。
彼女の芸術スタイルは非常に個性的です。絵画の多くは、現代の人々で賑わう場所、群集、人物像などを主題としていますが、動物やファンタジーの世界を描いた作品も手掛けています。技法面では、「半立体的」な表現が大きな特徴です。従来の平面的なキャンバスワークに留まらず、変形したキャンバスを用い、絵を額縁にまで描くことで、見る者に独特の奥行きと視覚的な面白さをもたらします。諸橋近代美術館では、彼女の作品について「自身の体験や記憶に基づいた身近なモチーフを組み合わせ、シュルレアリスティックな光景を描き出す」と紹介しており、現実と非現実が織り交ぜられた独特の世界観が表現されています。
クルック氏はまた、母国イギリスにおける芸術振興にも熱心に貢献しています。ウェスト・オブ・イングランド王立芸術アカデミーをはじめとする複数のアートクラブのメンバーとしても活動し、美術・芸術関連機関を支援しています。母校であるグロスターシャー大学からは名誉博士号が授与され、新設された寮の一つには彼女の姓である「Crook」がその名に冠されるなど、学術的な栄誉も得ています。グロスターシャー州の大使やカレッジの名誉副会長、さらには芸術著作権協会の管理職といった公的な役職も務めるなど、多方面でその影響力は及びます。これらの芸術分野における長年の献身的な活動と顕著な業績が高く評価され、2011年には大英帝国勲章（MBE）を叙勲するに至りました。彼女が支援している主な機関としては、ナショナル・スター大学、Linc（白血病＆化学療法基金）、チェルトナム・オープンスタジオ、Art Shape、ディーン彫刻の森などがあります。
パメーラ・ジューン・クルックは、その独創的な芸術表現と社会貢献の両面において、現代イギリスを代表するアーティストの一人として確固たる地位を築いています。特にキング・クリムゾンのアートワークは、視覚的な側面からバンドの世界観を広げる重要な役割を果たしました。
キング・クリムゾンのカバーアートを提供した主な作品は以下の通りです。
スタジオアルバム
『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』 (The Power to Believe, 2003年)
『ザ・リコンストラクション・オブ・ライト』 (The ReConstruKction of Light, 2019年) - 『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』40周年記念バージョン
ライブアルバム・EP
『エピタフ -1969年の追憶-』 (Epitaph, 1997年)
『ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々-』 (The Night Watch, 1998年)
『アブセント・ラヴァーズ』 (Absent Lovers: Live in Montreal, 1998年)
『サーカス〜ザ・ヤング・パーソンズ・ガイト・トゥ・キング・クリムゾン〈ライヴ〉〜』 (Cirkus: The Young Persons' Guide to King Crimson Live, 1999年)
『ヘヴィ・コンストラクション』 (Heavy ConstruKction, 2000年)
『ヴルーム・ヴルーム』 (Vrooom Vrooom, 2001年)
『レヴェル・ファイブ』 (Level Five, 2001年)
『しょうがない』 (Happy with What You Have to Be Happy With, 2002年)
『レディース・オブ・ザ・ロード』 (Ladies of the Road, 2002年)
『エレクトリック』 (EleKtrik: Live in Japan, 2003年)
『ザ・グレート・ディシーヴァー VOL.1・VOL.2』 (The Great Deceiver, 2007年) - 再発盤
『ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ / レヴェル・ファイヴ / エレクトリック：ライヴ・イン・ジャパン』 (Happy With What You Have To Be Happy With / Level Five / Elektrik, 2021年) - 3作再発盤BOXセット
コンピレーション
The Power to Believe Tour Box（2003年）
『濃縮キング・クリムゾン』 (The 21st Century Guide to King Crimson – Volume One – 1969–1974 / The 21st Century Guide to King Crimson – Volume Two – 1981–2003, 2006年)
『ジ・エレメンツ・オブ・キング・クリムゾン 2015』 (The Elements of King Crimson Tour Box 2015, 2015年)
『ヘヴン&アース 1997-2008』 (Heaven & Earth, 2019年)
ライブビデオ
『デジャ・ブルーム』 (Déjà Vrooom, 1999年)
『アイズ・ワイド・オープン』 (Eyes Wide Open, 2003年)
『ニール・アンド・ジャック・アンド・ミー』 (Neal and Jack and Me, 2004年)
Live in Argentina 1994（2012年）
プロジェクト
プロジェクト1：Live at the Jazz Café（1998年）
プロジェクト3：Masque（1999年）
The ProjeKcts（1999年）
The Deception of the Thrush: A Beginners' Guide to ProjeKcts（1999年）
ア・キング・クリムゾン・プロジェクト：Jakszyk, Fripp and Collins - A Scarcity of Miracles（2011年）
彼女の作品を収めた主な書籍には以下のようなものがあります。
書籍
P.J.Crook: A Retrospective 1980-1995（1996年）
The Dialects of England（2000年）
P J Crook（2003年）
* Leader to Leader（2013年）
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