PCエンジンシャトル

PCエンジンシャトル：廉価版戦略と市場の反応

1989年11月22日、NECホームエレクトロニクスは家庭用ゲーム機市場に新たな選択肢としてPCエンジンシャトルを発表しました。メーカー希望小売価格は18,800円。既存のPCエンジンと互換性がありながら、価格を抑えた廉価版として位置づけられていました。

デザインと特徴

PCエンジンシャトル最大の特徴は、そのデザインです。宇宙船を思わせる流線型の筐体は、既存のPCエンジンとは一線を画すものでした。低年齢層をターゲットにした機種であることが、この斬新なデザインからも見て取れます。

しかし、この価格を実現するため、いくつかの妥協がなされました。最も大きな違いは、CD-ROM²などの周辺機器と接続するための拡張バスが省略されていた点です。これは、当時としては画期的なCD-ROMによるゲーム体験を享受できないことを意味していました。また、広告や付属の小冊子にはドラえもんが起用され、親しみやすさを演出していました。

本体サイズは、スーパーグラフィックスほどではありませんが、初代PCエンジンと比較すると大型化しており、横幅は初代PCエンジンの対角線よりも大きくなっていました。本体カラーは、同時期に発売されたPCエンジンコアグラフィックスと同様にダークグレーが採用されました。標準でRCA端子と連射機能付きジョイパッドが付属していた点も特徴の一つです。

コントローラーのエルゴノミクスデザイン

PCエンジンシャトルに付属のコントローラーは、当時としては珍しいエルゴノミクスデザインが採用されていました。これは、PCエンジンシリーズ全体で見ても唯一の例であり、快適な操作性を追求した設計と言えるでしょう。

市場での評価と販売状況

ROMカード（HuCARD）ベースのゲームソフトで十分なユーザーをターゲットとした廉価版という位置づけでしたが、市場の反応は芳しくありませんでした。発売当時、初代PCエンジンの価格はPCエンジンシャトルと同等まで下がっており、価格競争力が弱かったと言えるでしょう。さらに、拡張性の低さがユーザーに敬遠された要因の一つと考えられます。CD-ROM²などの周辺機器が使用できないことは、ゲーム体験の幅を狭める大きなデメリットでした。

また、人気の高い廉価版セーブユニットである「天の声2」が使用できなかったことも、PCエンジンシャトルの普及を阻む要因となりました。高価な純正セーブユニットしか選択肢がないことは、廉価版としての魅力を大きく損なっていました。

PCエンジン市場がCD-ROM²へと移行していく中で、拡張バスを持たないPCエンジンシャトルの存在意義は薄れていきました。NECはその後、機能を削減することなく価格を抑えた廉価版としてPCエンジンコアグラフィックスIIを発売することで、この反省を活かすことになります。

まとめ

PCエンジンシャトルは、低価格化戦略によって生まれた機種でしたが、拡張性の欠如や競合機種との価格競争、互換性に関する問題などが重なり、市場での成功には至りませんでした。しかし、その個性的なデザインやエルゴノミクスデザインのコントローラーなど、独自の要素も持ち合わせていた機種と言えるでしょう。PCエンジンというプラットフォームの歴史において、一つの試みとしてその存在は特筆に値します。

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