RCA端子

RCA端子：アナログAV機器を支えた端子の歴史と構造

RCA端子は、映像や音声信号などの電気信号のやり取りに使われる端子の1種です。その名称は、1930年代に電気蓄音機向けのプラグを開発したRadio Corporation of America（RCA）社に由来しており、同社が歴史の舞台から去った後も、広く使われ続けています。

特に民生用の据え置き型機器においては、特に断りがない限り、アナログ映像・音声端子はRCA端子であることが一般的でした。ピン端子、ピンプラグ、ピンジャックと呼ばれることもあります。

RCA端子の構造

RCA端子のプラグは、中心に信号線となる金属棒（ピン）があり、それを囲むリング状の金属板がグランド線として機能します。ソケット側は、ピンを差し込む穴と、それを囲むリング状の金属部分から構成されます。接続時には、オス側のリングがメスのリングを挟み込む構造となっています。

従来はリングに四方の切り込みが入った「チューリップ」型が主流でしたが、現在は切り込みが1か所のみで、プラスチックで覆われた形状が一般的です。この構造上、接続時には信号線がグランド線より先に接触するため、ノイズに敏感な機器では電源を事前に切るなどの配慮が必要です。

端子の大きさはIECなどの規格で統一されていないため、メーカーによって微妙に違いがあり、接続の緩さや硬さ、深さなどにばらつきがあります。中には、確実な接続ができない組み合わせも存在します。逆に、この点を逆手に取り、接続後抜けにくくする工夫を凝らしたメーカーもあります。

用途別に色分けされている場合がありますが、構造自体に違いはありません。コンポジットケーブルの3本をコンポーネントケーブルとして転用することも可能です。ただし、安価なケーブルは規格インピーダンス（75Ω）を満たしていない場合があり、画質・音質の低下や機器の安定性悪化につながる可能性があります。

RCA端子の歴史とデジタル化への移行

長らくアナログ機器の接続に用いられてきたRCA端子ですが、近年はデジタル化の進展に伴い、HDMIなどのデジタル端子への移行が進んでいます。2013年以降製造のBDレコーダー・プレーヤーではアナログAV出力端子が廃止され、2020年以降の機種ではアナログAV入力端子も廃止されました。2022年以降製造の薄型テレビでは、アナログAV入力端子がRCA端子からミニジャックに変更され、変換ケーブルが必要となっています。さらに、2024年以降の4KテレビではアナログAV入力端子が完全に廃止される機種も登場しています。

国内メーカーの大半は、2020年までにアナログAVケーブル、アナログ音声ケーブル、光デジタルケーブルの生産から撤退しており、現在これらのケーブルを生産しているのはごく一部のメーカーに限られています。

RCA端子の色分け

複数のケーブルを接続する際に配線を容易にするため、用途別に色分けがされています。オス側はカバーに、メス側は穴の周囲に色が付けられます。ステレオ音声端子の登場以降、この色分けが一般的になりましたが、業務用機器では黒色のものが多く、高級品ではカバーの一部にのみ色付けされているものもあります。色分けはCEAによって規格化されていますが、モノラル音声の旧式テレビなどでは白色の端子も存在します。

RCA端子と他の規格との比較

RCA端子は、1つの信号ごとに1本のケーブルが必要なため、複数のケーブルが必要になります。これに対して、SCART端子やHDMI、一部のゲーム機用ケーブルなどは、音声と映像を1本のケーブルで伝送できます。コンポーネント映像信号を伝送する場合、RCA端子では3本のケーブルが必要となります。D端子は複数の信号を1本のケーブルにまとめる利点がありますが、信号線の近接による相互干渉により、RCA端子のコンポーネント接続に比べて画質が劣るとされる場合もあります。

RCA端子は、長年にわたってアナログAV機器の接続に貢献してきましたが、デジタル化の波の中でその役割を終えつつあります。しかし、現存する多くの機器や、コレクターの間では、なおその存在感は大きく、技術史における重要な位置を占めていると言えます。

もう一度検索