PC-100

NEC PC-100：日本初のマウス対応GUI搭載パソコン

1983年10月13日、NECは日本国内向けに画期的なパーソナルコンピュータ、PC-100を発表しました。PC-100は、日本におけるパソコンの歴史において、初めてマウスによるグラフィカルユーザインターフェース（GUI）を標準搭載した機種として知られています。この革新的なマシンは、アスキーの西和彦氏の提案に基づき、「日本版Alto」を目指して開発されました。

開発と製造

PC-100の開発は、NECの電子デバイス事業グループが主導し、アスキーと京セラ傘下のサイバネット工業が協同で行いました。製造は京セラが担当、実際の設計は日本マイクロハードの松本吉彦氏らが中心となり、その技術力は高く評価されています。

しかしPC-100は、NECの情報処理事業グループが開発したPC-9800シリーズとの競合に直面しました。その結果、上層部の決定により、電子デバイス事業グループはパソコン事業をNECホームエレクトロニクスへ譲渡することとなり、PC-100はNEC社内での優先順位が低くなってしまったのです。

ハードウェア仕様とGUI

PC-100は、[Intel 8086]]互換CPU]を7MHzで動作させ、128KBのメインRAMを標準搭載(最大768KBまで拡張可能)していました。グラフィック表示には1024×1024[[ドットのビットマップVRAM(model 10と20は128KB、model 30は512KB)を採用し、テキストVRAMは持たない設計でした。

GUI実現のため、CRTコントローラ、DMAコントローラ、I/OコントローラなどにASICによるカスタムチップを積極的に採用することで、当時のCPU性能の制約を克服し、実用的な応答速度を実現しました。専用のディスプレイは縦置き・横置き両対応で、縦置き時は512×720ドット、横置き時は720×512ドットの解像度で表示可能でした。ウィンドウ機能によるスムーズなスクロールも特徴的です。model 30はカラー表示にも対応していました。

ソフトウェアと周辺機器

PC-100はMS-DOS Ver.2.01を標準OSとして搭載し、VISUAL COMMAND INTERFACE（VSHELL）と呼ばれるGUIシェルプログラムと、日本語ワードプロセッサ「JS-WORD」、表計算ソフト「Multiplan」、GW-BASIC、ゲームソフト「ロードランナー」などを標準添付していました。ROM-BASICは搭載されていませんでした。

マウスはアルプス電気が開発した初代マイクロソフトマウスと同様の製品を採用し、キーボードもアルプス電気製でした。

商業的な失敗とマニアの間での評価

PC-100は様々な先進的な機能を搭載していましたが、PC-9800シリーズとの競合、高価格、従来機との互換性の欠如、FDD容量の小ささなどが影響し商業的には成功しませんでした。結果として、市場ではPC-9800シリーズが主流となりました。

しかし、その後のマニアによる活動で、PC-100は注目を集めることになります。彼らはPC-9801用のMS-DOSを動作させるためのパッチを作成したり、CPUをV30に換装したり、FDDを2DDに交換するなどしてPC-100を改良しました。MS-DOSをベースとした環境では一定の実用性を実現していたのです。

未来技術遺産

2016年には、最早期のマウスとGUI搭載機としての評価から、国立科学博物館の未来技術遺産に登録されました。このことは、PC-100が日本のコンピュータ技術発展において重要な役割を果たしたことを示しています。PC-100は商業的には失敗したものの、その技術的意義は現在も高く評価されています。

詳細仕様

CPU: μPD8086-2 (Intel 8086互換) 7MHz
RAM: 128KB標準 (最大768KB)
VRAM: 128KB (model 10, 20), 512KB (model 30)
FDD: 5.25インチ 2D (360KB)×1 (model 10), 2 (model 20, 30)
表示解像度: 720×512 (横置き), 512×720 (縦置き)
OS: MS-DOS Ver.2.01
* GUI: VISUAL COMMAND INTERFACE (VSHELL)

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