PC-8200シリーズ

NEC PC-8201：A4サイズのビジネス・ポータブルコンピュータ

1983年3月、NECはA4サイズのハンドヘルド型パソコン、PC-8201を発表しました。PC-8000シリーズとPC-8800シリーズの間に位置づけられ、本格的なビジネスユースを想定したモデルとして展開されました。ノートパソコンという概念がまだ一般的ではなかった当時、PC-8201は現代のノートパソコンに近い役割を果たす製品でした。

PC-8201は、アイボリーホワイト、ワインレッド、メタリックの3色のボディカラーが用意され、液晶ディスプレイとキーボードが一体化されたコンパクトなデザインが特徴です。液晶ディスプレイは横長の形状で、最大240×64ドットのグラフィック表示と、40文字×8行のテキスト表示に対応。キーボードはJIS配列を採用していますが、本体サイズの制約からテンキーは省略され、「ろ」のキーが最下段からはみ出す独特なレイアウトとなっていました。

搭載されているのは、NEC独自のN82-BASIC。N-BASICをベースに、いくつかのコマンドやステートメントが追加・削除されています。具体的には、AUTO、CONSOLE、SWAP、TRON、TROFF、LINE、MONといったコマンドやステートメントは削除され、BLOAD、BSAVE、EDIT、SOUNDなどが追加。N-BASICで作成されたプログラムは、削除されたコマンドを「PC」に置き換えることで、N82-BASICでも読み込むことができました。プログラムの編集には、N82-BASICモードからEDITコマンドでTEXTモードへ移行する必要があり、TEXTモードからN82-BASICモードに戻るにはファンクションキーF10を使用する仕組みでした。

PC-8201は、単3乾電池4本でも駆動するという高い携帯性を誇っていました。ACアダプタやニッケルカドミウム電池パックも利用可能で、マンガン電池使用時は約6時間、アルカリ電池使用時は約18時間のバッテリ駆動が可能でした。RAMの容量は標準で16KBでしたが、最大96KBまで拡張可能。ROMも標準で32KB、最大192KBまで拡張することができました。

さらに、PC-8201は様々な周辺機器との接続にも対応していました。フロッピーディスクドライブ、プリンタ、バーコードリーダー、モデムなど、ビジネス用途に必要な周辺機器を接続し、機能を拡張することが可能でした。中でも、PC-8233 FDD I/Fユニットを介してPC-8031シリーズなどのフロッピーディスクドライブと接続できる点が、データの保存と管理において大きな利点となっていました。また、オプションとして漢字ROMカートリッジや増設RAMなども用意されていました。

PC-8201は日本国内では単独機種として展開されましたが、海外市場ではPC-8201Aという国外仕様モデルや、後継機種であるPC-8300も発売されています。ハードウェア設計と製造は京セラが行っており、海外市場ではTandy社のTRS-80 Model 100やOlivetti社のM-10としても販売されていました。PC-8201シリーズの後継機種としては、ROM-BASICを廃しCP/M-80を搭載したPC-8401（Starlet）やPC-8500などが登場し、これらの開発経験は後のPC-98LTや98NOTEシリーズの開発に繋がっています。PC-98LTのデザインは、PC-8401やPC-8500のデザインと酷似している点も興味深いところです。

PC-8201は、そのコンパクトなサイズと高い機能性で、当時のビジネスパーソンから高い評価を受けました。現代から見ると、そのスペックやデザインは古く感じられるかもしれませんが、その先進性と携帯性は、後のポータブルパソコンの発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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