PC-8000シリーズ

PC-8000シリーズ：日本のパソコン黎明期を彩った名機群

日本電気（NEC）が1979年から1985年にかけて発売したPC-8000シリーズは、日本のパーソナルコンピュータの歴史において重要な役割を果たした機種群です。PC-8001、PC-8001mkII、PC-8001mkIISRの3機種からなり、その高い完成度と豊富なソフトウェア、周辺機器によって、当時のパソコン市場を大きく牽引しました。本稿では、それぞれの機種の特徴、開発背景、そしてその後の影響について詳しく解説します。

PC-8001：日本のパソコン市場を席巻した先駆者

1979年9月20日に発売されたPC-8001は、16万8千円という当時としては比較的安価な価格設定と、完成度の高いハードウェア、ソフトウェアによって、瞬く間に人気機種となりました。キーボードと本体が一体化された洗練されたデザインも魅力の一つでした。

開発秘話：

PC-8001の開発は、1978年夏頃、NEC電子デバイス販売事業部の10名ほどのチームによって開始されました。社内コードネームは「PCX-1」。開発チームは、既存のマイコンとは一線を画す、本格的な完成品を目指しました。マイクロソフト製のBASICの採用や、ミニコンの端末としても使えるシックなデザインの採用など、数々の工夫が凝らされています。発売当初は社内からも反対意見が多く、テスト販売を経て慎重に市場投入が決定されました。

技術仕様と評価：

PC-8001は、[Z80]]A互換[[CPU]、16KB RAM(最大32KB)、24KB ROMを搭載。当時としては十分な性能を備えていました。160×100ドットのグラフィック表示も高く評価されました。拡張スロットは存在しませんでしたが、別売の拡張ボックスを用いることで機能拡張が可能でした。雑誌『ASCII』のレビューでは、高い完成度と優れた耐久性が評価され、「最強のマシン」と称賛されました。

ビジネスへの影響：

PC-8001の成功は、NECの事業展開に大きな影響を与えました。PC-8001の存在を知ったNEC会長小林宏治氏の主導で社内研修が行われ、マイクロコンピュータ販売部はパーソナルコンピュータ事業部として独立しました。また、PC-8001は教育現場にも導入され、情報教育の普及にも貢献しました。

PC-8001mkII：PC-8001の進化形、業務用途にも対応

1983年3月に発売されたPC-8001mkIIは、PC-8001の後継機として登場。希望小売価格は12万3千円。PC-8001で別売だったRS-232Cインターフェース、5インチFDDインターフェース、拡張スロットなどを標準搭載。640×200ドットのグラフィック表示も可能となり、漢字表示もサポートしました。業務用途も意識した強化が図られています。しかし、サウンド機能はPC-8001と同様のビープ音のみと、AV面ではやや見劣りする部分も。

PC-8001mkIISR：更なる高みを目指した最終モデル

1985年1月に発売されたPC-8001mkIISRは、PC-8001mkIIの後継機です。希望小売価格は10万8千円。グラフィック機能がさらに強化され、640×200ドット8色表示に加え、320×200ドット8色表示による2画面重ね合わせも可能になりました。FM音源も搭載され、サウンド機能も大きく向上しました。しかし、PC-8800シリーズの台頭に押され、市場での存在感は薄れていきました。

まとめ

PC-8000シリーズは、日本のパソコン黎明期を象徴する機種群です。PC-8001の成功は、日本のパソコン市場の拡大に大きく貢献し、多くのユーザーにパソコンの魅力を伝えました。後継機であるPC-8001mkII、PC-8001mkIISRは、PC-8001の優れた点を継承しながらも、時代の変化に合わせて機能拡張が図られていました。PC-8000シリーズは、日本のパソコンの歴史において、決して無視できない存在なのです。

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