PDF417

PDF417とは

PDF417は、主にアメリカ合衆国で普及しているスタック式二次元コード規格です。身分証明書をはじめ、様々な用途に利用されています。PDFは「Portable Data File」の略で、417という数字は、コード内の各パターンがバーと空白で構成され、各パターンが17ユニットの長さを持つことに由来します。

開発と規格

PDF417は、アメリカのシンボル・テクノロジーズ（現モトローラ・ソリューションズ社）のYnjiun P. Wang博士によって考案されました。しかし、パブリックドメインとして公開されており、誰でも自由に利用できます。ISO規格では、15438として規定されています。

特徴

PDF417には、以下のような特徴があります。

連結性: 複数のバーコードを連結させることで、記録可能な情報量を拡張できます。
ユーザー指定の寸法: バーの幅（X寸法）や高さ（Y寸法）をユーザーが指定できます。
パブリックドメイン: ライセンス不要で、誰でも利用できます。

用途

PDF417は、商用およびアメリカの政府機関で幅広く使用されています。

郵便料金の印刷: アメリカ合衆国郵便公社が認可した規格の一つです。
航空券: バーコード搭乗券規格（BCBP）により、搭乗券の二次元コードとしても利用されています。
身分証明書: アメリカ合衆国国土安全保障省（DHS）の標準規格として、運転免許証や州発行の身分証明書に採用されています。また、イスラエルが発行するビザや国境通過カードにも含まれています。

フォーマット

PDF417のバーコード（シンボル）は、3〜90行で構成されています。各行は、以下のような要素を含んでいます。

1. 静粛ゾーン: バーコード開始前の空白部分です。
2. 開始パターン: PDF417のフォーマットを特定します。
3. 左行: 行番号やエラー訂正レベルなどの情報が含まれます。
4. データコードワード: 数字、文字、記号などを表すバーと空白の集団です。
5. 右行: 行に関する追加情報が含まれます。
6. 停止パターン: バーコードの終わりを示します。
7. 停止後の静粛ゾーン: バーコード終了後の空白部分です。

各行の幅は同じで、同じ数のコードワードが含まれています。

コードワード

PDF417は929進法のエンコードを使用し、各コードワードは0から928の数字を表します。コードワードは、バー（暗い領域）と空白（明るい領域）のパターンで表現されます。各パターンは4つのバーと4つの空白で構成され、合計幅は最小バー幅の17倍になります。

行の高さは、最小バー幅の3倍以上である必要があります。

コードワードは、3つの異なるバーと空白のパターン（クラスタ）を使用します。クラスタは0、3、6とラベル付けされ、行ごとに循環して使用されます。

クラスタの決定

クラスタは、以下の数式で決定されます。


K = b1 - b2 + b3 - b4 + 9 (mod 9)


または


K = E1 - E2 + E5 - E6 + 9 (mod 9)


ここで、Kはクラスタ番号、biはi番目のバーの幅、Eiはi番目のエッジ間の距離を表します。

クラスタは、スキャン時の歪みを検出し、正確な読み取りを可能にします。

エンコード

利用可能な929個のコードワードのうち、900個がデータに使用され、29個はモード間移行などの特殊機能に使用されます。

エンコードの主要な3つのモードは以下の通りです。

バイトモード: 5つのコードワードのグループで6バイトを表現します。
数字モード: n桁の数字を⌊n/3⌋+1コードワードでエンコードします。
テキストモード: 各コードワードで2文字を表現し、大文字、小文字、混合、句読点の4つのサブモードを使用します。

エラー訂正

PDF417には、リード・ソロモン方式のエラー訂正機能が組み込まれています。2から512個のエラー訂正コードワードを追加することで、シンボルの破損によるデータの損失を最小限に抑えることができます。

他のシンボルとの比較

PDF417はスタック式バーコードであり、線形スキャナーで読み取ることができます。各行には行番号がエンコードされており、線形スキャナーは単一行だけでなく、複数行を跨いで読み取ることもあります。そのため、PDF417のモジュールは、高さが幅の3倍という、背が高く幅が狭い形状になっています。

他の二次元コード（DataMatrixやQRコード）は、イメージセンサーでデコードされ、認識と照準のパターンが必要となります。PDF417に比べると、より小さい面積で同じ情報を表現できます。

実際には、PDF417シンボルはDataMatrixやQRコードの約4倍の領域を占めます。

まとめ

PDF417は、その柔軟性と情報量の多さから、様々な場面で活用されています。特にアメリカでは、身分証明書や航空券など、重要な情報を含む用途に広く利用されています。スタック式バーコードとしての特性から、線形スキャナーでの読み取りが可能であり、ユーザーが用途に応じて寸法を調整できる点も魅力です。ただし、他の二次元コードと比較すると、同じ情報量を表現するのに必要な面積が大きくなるという点には注意が必要です。

参考資料

小林クリエイト株式会社「PDF417基礎知識」
ISO/IEC 15438:2006(E) "Information technology – Automatic identification and data capture techniques – PDF417 bar code symbology specification (second ed.)"
US 5243655 "System for Encoding and Decoding Data in Machine Readable Graphic Form"

関連項目

二次元コード
QRコード

外部リンク

PDF417 Description
Free font, Windows encoder and detailed explanation
PDF417 Barcode Generator
ZXing PDF417 online decoder
* PDF417 online decoder

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