PJ352-15

PSO J352.4034–15.3373（PJ352-15）

PSO J352.4034–15.3373、通称PJ352-15は、宇宙の遥か遠方、地球からおよそ127億光年の距離に位置する天体です。この天体は、クエーサーと呼ばれる活動的な銀河核の一種に分類されます。クエーサーは、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの周囲に集まった物質が、激しく回転しながらブラックホールに吸い込まれる際に莫大なエネルギーを放出し、極めて明るく輝いている天体です。

PJ352-15の際立った特徴は、その中心に鎮座する巨大な超大質量ブラックホールから、強烈な宇宙ジェットが噴出している点にあります。このブラックホールは、太陽の質量のおよそ10億倍に相当する巨大さを持っています。このような超大質量ブラックホールのごく近傍では、ガスや塵が高速で移動し、極めて高い温度に加熱されます。そして、その一部はブラックホールの自転軸方向に沿って、光速に近い速度で吹き出すジェットとなって放出されると考えられています。

この特異なクエーサーは、NASAのチャンドラX線観測衛星によって発見されました。チャンドラは、宇宙から飛来するX線を捉えることに特化した高性能な望遠鏡であり、高温のガスやブラックホール周辺のような高エネルギー現象の観測に威力を発揮します。PJ352-15からのX線信号を捉えたことが、この天体の存在と、そこからX線ジェットが放出されていることを明らかにする手がかりとなりました。

PJ352-15の発見は、2021年3月に学術的な報告として公表されました。この発見が特に注目された理由の一つは、その観測距離にあります。約127億光年という距離は、宇宙が誕生してから間もない非常に初期の時代に光が放たれたことを意味します。宇宙の歴史における比較的早い段階で、これほど巨大なブラックホールが存在し、かつ強力なジェットを噴出していたという事実は、銀河や超大質量ブラックホールの進化に関する既存の理論に新たな視点を提供しました。

さらに重要な点として、このクエーサーから放たれるX線ジェットは、発見が報告された当時において、確認されていたX線ジェットの中では最も遠い距離から観測されたものとして記録されました。X線ジェットの観測は、ジェットを構成する粒子のエネルギーやジェットが発生するメカニズムを探る上で非常に重要です。遠方の天体からのX線ジェットを観測することは、宇宙初期の活動銀河核やジェットの物理的状態を知る上で貴重な情報をもたらします。PJ352-15のX線ジェットの観測は、宇宙が若かった頃にどのようにして巨大な構造が形成され、エネルギーが放出されていたのかを理解するための重要な一歩となりました。

このように、PSO J352.4034–15.3373は、その巨大なブラックホール、強力なジェット、そして宇宙論的に重要な距離という点で、天文学者たちの興味を引く天体であり、宇宙の進化史を探る上での貴重な観測対象となっています。

もう一度検索