POWER8

IBM POWER8 マイクロプロセッサの詳細解説

POWER8は、IBMが2014年4月に発表した、Power Architectureをベースとした64ビットの高性能マイクロプロセッサです。前世代のPOWER7の後継として開発され、OpenPOWER Foundationを通じてライセンス提供される最初のハイエンドプロセッサとなりました。後継モデルはPOWER9です。

アーキテクチャの特長

POWER8は、スーパースカラー型のシンメトリックマルチプロセッサ（SMP）アーキテクチャを採用しています。2013年8月のHot Chipsカンファレンスでその概要が発表され、2014年4月にPower Systems Sクラスに搭載されるプロセッサとして正式に発表されました。

POWER7からの主な拡張点として、以下の点が挙げられます。

コア数の増加: 1ソケットあたりのコア数が8から12に増加しました。
[同時マルチスレッディング]の強化: 各コアの同時マルチスレッディングが最大4スレッドから最大8スレッドに向上し、1ソケットあたり最大96スレッドの同時処理が可能になりました。
キャッシュの増強: L1、L2、L3キャッシュの容量が増加し、新たにL4キャッシュが導入されました。
メモリおよびI/O帯域幅の拡大: データ転送速度が向上し、大量のデータ処理に対応できるようになりました。

これらの強化により、ビッグデータ、データ分析、モバイル、クラウドコンピューティングといった、大量のデータ処理が求められる分野での活用が期待されています。

製造プロセスと実装

POWER8は、22nm SOI（Silicon on Insulator）プロセスで製造されています。デュアルチップモジュール（DCM）技術により、1ソケットに2つのチップを搭載しています。外部通信バスには、従来のGX++ではなく、PCI Expressレイヤーの最上位であるCAPI（Coherence Attach Processor Interface）ポートを採用し、帯域幅を拡大しています。

詳細な仕様

以下に、POWER8の主な仕様をまとめます。

製造プロセス: 22 nm SOI
動作周波数: 3.0 - 4.1 GHz
ソケットあたりチップ数: 最大2チップ（DCMあたり最大2チップ）
チップあたりコア数: 最大6コア（ソケットあたり6, 8, 10, 12コア構成）
コアあたりSMT: 最大8SMT（チップあたり最大48SMT、ソケットあたり最大96SMT）
L1キャッシュ: 最大64KB
L2キャッシュ: 最大512KB
L3キャッシュ: 最大96MB（ソケットあたり、eDRAM）
L4キャッシュ: 最大16MB（コントローラあたり、eDRAM）
メモリバンド幅: 230 - 410 GB/秒

POWER8の採用事例

POWER8は、以下のシステムに採用されています。また、OpenPOWER Foundationを通じてライセンス供給されています。

IBM: 2014年4月にPower Systems Sシリーズ（S812L、S822/S822L、S814、S824/S824L）を発表しました。なお、S824Lは日本では未発表です。
日立製作所: 2014年5月にEP8000シリーズ（S824、S814、E880、E870）を発表しました。
Google: 2013年2月に自社製POWER8サーバーの報道があり、2014年4月28日開催のIBM ImpactでPOWER8搭載マザーボードを参考出品しました。

参考資料

以下に、POWER8に関する参考資料をまとめます。

[IBM]] Power Systems: [POWER8搭載サーバー
[IBM]] Power Systems: [IBM Power Systems
[IBM]] Systems Japan blog: [IBM Systems Japan blog(Power Systems)
[IBM]] Power Systems (PDF): [POWER8 Overview
PC Watch: IBMが技術の集大成のモンスターCPU「Power8」を発表
ITPro: 日本IBMが新プロセッサ「POWER8」を解説、最大96スレッドを同時に実行
[IBM]] マーケットプレイス: [IBM マーケットプレイス
[IBM]] ソフトウェア:[IBM ソフトウェア

関連情報

Power Architecture
POWERプロセッサシリーズ
POWER7

POWER8は、その高い並列処理能力と拡張性により、大規模なデータセンターや高性能コンピューティング環境で広く利用されています。IBMの技術革新の象徴として、その後のプロセッサ開発にも大きな影響を与えました。

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