PearPC

PearPCとは

PearPCは、PowerPCアーキテクチャをエミュレートするソフトウェアです。これにより、macOS、Darwin、Linuxなど、PowerPC向けに開発されたオペレーティングシステム（OS）を、x86アーキテクチャのコンピュータ上で実行できます。PearPCはGPL（GNU General Public License）の下で配布されており、オープンソースソフトウェアとして利用できます。

PearPCは、x86ベースのシステムであるWindows、Linux、FreeBSDなどの環境で動作可能です。2004年5月10日に最初の公式リリースが行われました。

技術的な特徴

PearPCの中核となるのは、PowerPCコードをx86コードに動的に変換する、ジャストインタイム（JIT）プロセッサエミュレーション・コアです。このJITコンパイラによる動的変換と変換結果のキャッシュにより、一般的な汎用プロセッサエミュレーション・コアに比べて30倍以上高速な動作を実現しています。ただし、ネイティブコード実行と比較すると、15倍程度の時間がかかるという課題も抱えています。

PearPCは、PowerPC G4プロセッサのAltiVec命令セットをサポートしており、グラフィックスカードのアクセラレーション機能にも対応を進めています。これにより、macOSのQuartz Extremeの性能向上も期待されています。

現状と課題

PearPCの最新版は、2011年7月13日にリリースされたバージョン0.5.0です。多くのアプリケーションがエミュレータ上で動作しますが、いくつかの機能が未実装です。

サウンド機能エミュレーション: サウンド出力がエミュレートされていません。
G5エミュレーション: PowerPC G5プロセッサのエミュレーションは未実装です。
.dmgサポート: macOSのディスクイメージ形式である.dmgファイルは直接サポートされておらず、ISO 9660形式に変換する必要があります。

これらの課題は、SourceForgeに公開されている最新のソースコードでは対応されていますが、公式に配布されているバイナリ形式の実行ファイルはバージョン0.5.0以降リリースされていません。そのため、ユーザーは自分でソースコードからビルドする必要があります。

PearPCを巡る動き

2005年6月6日、AppleのCEOであったスティーブ・ジョブズは、PowerPCからx86アーキテクチャへの移行を発表しました。この移行は2006年8月に完了し、PearPCの将来に対する議論が活発化しました。macOSがx86プラットフォームでネイティブに動作するようになると、PearPCの必要性は薄れ、VMwareなどの他の仮想化製品で代替可能になったと考えられました。

フロントエンド

PearPC自体にはGUI（グラフィカルユーザーインターフェース）がありません。以前は「Change CD」ボタンがありましたが、正常に動作しなかったため削除されました。しかし、PearPCの操作を支援するためのいくつかのフロントエンドが開発されています。

PearGUI: macOSアプリケーション風の見た目を持つフロントエンドですが、最新版のPearPCでは動作しません。
PearPCCP (PearPC Control Panel): PearPC 0.3以降で動作するフロントエンドで、機能が豊富ですが、GUIの質はやや劣ります。
APE: PearPC.netが独自に開発したJavaベースのフロントエンドです。

CherryOS騒動

PearPCのリリースから数ヶ月後、CherryOSという別のPowerPCエミュレータが登場しました。CherryOSはPearPCよりも高機能で高性能であると宣伝されましたが、発表直後から、多くの専門家がCherryOSはPearPCの再パッケージではないかという疑問を呈しました。2005年3月に商用製品として再リリースされたCherryOSは、PearPCのコードの一部または全部を使用していると指摘され、Mac OS Xをx86アーキテクチャ上で動作させることの合法性も問題となりました。Appleのライセンス契約では、OSはApple製コンピュータでのみ動作することが許可されているためです。その結果、CherryOSは販売中止になりました。

関連項目

SheepShaver: 他のPowerPCエミュレータ

外部リンク

PearPC 公式サイト
PearPC.Net コミュニティサイト
PearPC Web Forum
PearPC nightly builds
E-Maculation's PearPC page

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