Philosophia (浜田麻里のアルバム)

『Philosophia』（フィロソフィア）は、浜田麻里が1998年10月21日にポリドールからリリースした17枚目のアルバムです。前作『Persona』（1996年）から約2年半ぶりの作品であり、MCAビクターからポリドールへ移籍後、初のアルバムとなりました。

制作の背景

このアルバムは、浜田麻里がMCAビクターからポリドールへ移籍した後に制作されました。移籍の背景には、自身の心身の疲弊、海外戦略の未熟さ、そして人間関係への不信感がありました。特に、MCAビクターのA&R担当者から前作『Persona』を批判されたことが、移籍を決意する大きな要因となりました。事務所スタッフもMCAビクターとの関係に不安を感じ始め、A&Rとマネージャーの間には軋轢が生じていました。浜田自身は移籍を全く考えていなかったものの、新聞に「浜田麻里移籍」と大きく報道されたことで、結果的に移籍せざるを得ない状況になったと述べています。このアルバムの制作時、浜田はスタッフとのコミュニケーションをほとんど取らず、孤独な状況で制作に取り組んだと語っています。

この時期、浜田は哲学や精神分析学に強い関心を持ち、「人間の心の不可思議さ」や「人の言動の根源」を探求したいと考えるようになりました。また、実父が脳出血による失語症と診断されたことが、脳科学への興味へと繋がりました。アルバムタイトルである『Philosophia』は、「知を愛する」という意味を持ち、人間不信の状態から「知の世界」に救いを求めたという、当時の彼女の心境を表しています。

音楽性と収録曲

アルバムの1曲目「Eclipse」は、世紀末の危機感を表現した楽曲で、浜田は「リスナーの年代や精神状態によって感じ方が違うだろう」と語っています。2000年問題など社会全体が不安を抱えていた時期であり、彼女の作品にはその時代の空気感が反映されています。浜田自身はこの曲を非常に気に入っており、2023年時点でも好きな楽曲だと公言しています。

また、11曲目の「Since Those Days」は、従来の浜田の楽曲とは異なる歌詞が特徴的で、「何かを掲げて生きるほど人は強くなくていい」というメッセージが込められています。

批評

音楽誌『CDジャーナル』は、このアルバムの楽曲の質について「恐ろしいほどのヴォーカル・テクニックと完璧に織り成されたサウンド」と高く評価しましたが、2年半というブランクから「スキのなさからくる体温の欠如」と指摘し、「“素”に戻ったハダカの歌を聴いてみたい」とアルバム全体を否定的に評価しました。

参加ミュージシャン

このアルバムには、以下の豪華なミュージシャンが参加しています。

Drums: John Robinson, Mike Baird
Bass: Leland Sklar
Guitars: Michael Landau, 大槻啓之 (M-7の1stソロ)
A.Guitars: Dean Parks, Michael Landau, 増崎孝司
Keyboards: Robbie Buchanan, Kevin Savigar
Mandorin: Grant Geissman
Percussion: Lenny Castro
Violin: Sid Page

『Philosophia』は、浜田麻里のキャリアの中でも特に内省的で、彼女自身の心の葛藤や変化が色濃く反映された作品です。音楽的な完成度の高さはもちろんのこと、彼女が抱えていた精神的な背景を知ることで、より深くこのアルバムを理解することができるでしょう。

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