Pochy

Pochyは、Microsoft Windows環境で動作するオープンソースの電子メールクライアントとして開発されました。2003年7月に最初のバージョン0.1が公開され、当初は個人名義で開発が進められていましたが、同年9月には「Pochy project team」というチーム名で開発されるようになりました。

初期のPochyは、その設計思想から、利便性と柔軟性を重視した特徴を持っていました。特に注目すべきは、Windowsのレジストリを使用せずに、設定情報をINIファイルに保存する点です。これにより、USBメモリなどの外部記憶装置にPochyをインストールし、場所を選ばずにメールの送受信を行うことが可能でした。これは、外出先で一時的にメールを確認したいユーザーにとって非常に便利な機能でした。

対応プロトコルとしては、POP3、SMTP、POP before SMTP、SMTP AUTHをサポートしていました。しかし、IMAPには対応していませんでした。セキュリティ面では、外部の暗号化ソフトウェア「GNU Privacy Guard」を導入することで、暗号化されたメールの送受信や、APOPによるユーザー認証が可能でした。また、複数のメールアカウントを登録して利用することもできました。

一方で、Pochyにはいくつかの制約もありました。HTML形式のメールには対応しておらず、テキスト形式のみの表示でした。また、Unicodeで記述されたテキストメールも正常に表示することができませんでした。アドレス帳はCSV形式に対応しており、EdMaxという他のメールソフトのアドレス帳ファイルをそのまま利用できる点は、ユーザーにとって移行が容易であるという利点がありました。

残念ながら、Pochyの開発は2005年頃に事実上停止してしまいました。しかし、オープンソースとして公開されていたため、そのソースコードを基に、第三者による派生ソフトウェアの開発が行われました。

代表的な派生ソフトウェアとしては、Sakon.Y氏が開発した「Pochy改造版」があります。この改造版では、UTF-8に対応し、HTMLメールの表示も可能になりました。その他、minamina氏が開発した「pochy_d」や、2ch風の外観や機能が追加された「Nullpochy」といった派生ソフトウェアも存在しました。

Pochyは、そのシンプルさと携帯性の高さから、一部のユーザーに支持されました。しかし、開発が終了した今となっては、過去のソフトウェアの一つとなっています。Pochyの歴史は、オープンソースソフトウェアの柔軟性と可能性、そして開発が途絶えることで生まれる派生開発の重要性を示唆しています。

参考情報として、Pochyプロジェクトの日本語トップページはOSDNに、また、VectorのソフトウェアレビューにはPochyに関する情報が掲載されています。

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