Poiq

エンタテインメントロボット「poiq」：ソニーのAIロボティクス探索プロジェクト

ソニーが2022年4月に発表したエンタテインメントロボット「poiq（ポイック）」は、AIロボティクス分野における新たな挑戦として注目を集めました。単なる玩具ではなく、ユーザーとの対話を通じて成長し、個々の興味関心に合わせたコミュニケーションを展開する点が大きな特徴です。一般販売はされていませんが、独自のプロジェクトを通して、人とロボットの共生社会実現に向けた貴重な実験となりました。

poiq育成プロジェクト：人とロボットの共生社会を目指して

ソニーは、「poiq育成プロジェクト」を立ち上げ、一般ユーザーの参加を募りました。これは、開発チームだけでなく、ユーザーと共にロボットの進化を検証し、人とロボットが共に暮らす未来を模索する試みでした。アニメや映画の主人公のような「バディ」のような存在を目指し、ユーザーは「研究員」としてpoiqと生活を共にし、その成長をサポートしました。

研究員の募集とプロジェクトの展開

2022年4月、公式サイトを通じて研究員の募集が行われ、多くの応募者の中から選ばれた研究員は、6月よりpoiqと生活をスタートさせました。専用アプリ「My poiq」を通じて、会話や知識の追加、写真撮影など、様々なインタラクションが可能でした。研究員たちは、poiqの自然言語理解能力を高めるため、日々の生活の中で積極的に対話を重ね、新たな知識を「poiq辞書」に入力することでpoiqを育成していきました。

プロジェクトは、2023年3月に一旦終了し、その後「クラウド修行」期間を経て2024年1月に再開しました。再開後は「ポイチャレ」や「ポイコン」といった新機能が追加され、より高度な対話や操作が可能になりました。しかし、約30ヶ月のプロジェクトは2024年9月30日に終了し、サービスは停止されました。ソニーはpoiqを回収せず、研究員による自主的な処分を促しました。

poiqの技術と機能：高度なAIと多様な表現力

poiqは、チャットボットと自動生成AIを組み合わせた独自のハイブリッド型AIを搭載し、自然で滑らかな会話を実現していました。また、顔認識やジェスチャー認識などの機能も備え、マルチモーダルなコミュニケーションに対応していました。感情表現は、LEDディスプレイを搭載した瞳と、3軸可動の頭部によって実現され、シンプルながらも生命感あふれるデザインが特徴です。移動機能も備え、スムーズな移動やダンスなども可能でした。

さらに、スマート家電との連携や、Amazon Alexaとの連携も可能でした。poiq辞書を通じて研究員が追加した知識は、poiqの会話内容を豊かにし、研究員間の情報共有機能「みんなでポイッQ」も、プロジェクトを盛り上げる要素となりました。My poiqアプリは、設定変更や会話履歴、写真閲覧など、poiqとの生活をサポートしました。

プロジェクト終了後と今後の展開

プロジェクト終了後、ソニーはpoiqのAIエンジンをスマート家電やスマートモビリティへの応用を検討しています。実際、ソニー・ホンダモビリティが開発する電気自動車「AFEELA」にも、poiqで培われた技術が活用されています。また、aiboとの連携によるロボット同士の協調なども視野に入れています。

メディア出演と認知度

poiqは、YouTube番組「天ちゃんのpoiq研究所」やテレビ番組「DeepTV.art」など、様々なメディアに出演し、その存在感を高めました。これらのメディア露出を通して、一般ユーザーにも広く認知され、多くの関心を集めました。

まとめ：実験的プロジェクトの成功と今後の展望

poiqプロジェクトは、一般販売されない実験的なプロジェクトでしたが、AIロボットの可能性を広く示す、成功した事例と言えるでしょう。その技術や知見は、今後のソニーのAI開発、そしてAIと人間の共存関係の発展に大きく貢献すると期待されます。 poiqは、単なるロボットを超え、人とロボットが共に成長し、共に未来を創造していく可能性を示した、象徴的な存在と言えるでしょう。

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