Project Loon

プロジェクトルーン：空からのインターネット接続

プロジェクトルーンは、Google関連企業のX社が開発を進めていた、高高度気球を用いた移動体通信システムです。このプロジェクトの目的は、これまで通信網が整備されていなかった地域の人々が、成層圏に浮かぶ気球に搭載された中継装置を介してインターネットに接続できるようにすることでした。

概要

プロジェクトルーンは、主に開発途上国などの通信インフラが不十分な地域を対象としていました。成層圏を浮遊する高高度気球に中継装置を搭載し、これによりインターネット接続を提供することを目指していました。気球同士が通信することで、1機の気球が地上約40kmの範囲に3G回線と同程度の通信速度を提供する計画でした。

気球は風に乗って移動するため、アメリカ海洋大気庁（NOAA）のデータを利用してその動きを予測・制御していました。2013年にはニュージーランドで直径15×12メートルの大型気球30個を高度約20kmの成層圏に浮かべ、実証実験が行われました。その後、2015年5月には気球をLTE通信に対応させ、10Mbpsの速度での通信を可能にする改良が加えられ、ニュージーランドでの試験に加え、新たにグリーンランドでも実施される予定が発表されました。

しかし、2021年1月、プロジェクトルーンは会社の解散を発表しました。この背景には、近年のインターネット普及率の向上が挙げられます。WIREDの記事では、インターネットを利用できる人口が過去10年間で73%から93%に増加したことで、将来的なサービス需要が見込めなくなったことが解散の理由として指摘されています。

実現性

プロジェクトルーンの実現には、いくつかの課題がありました。

気球の維持: 気球を常時成層圏に留まらせる必要がありましたが、浮揚ガスは徐々に抜けていくため、定期的な気球の追加が必要でした。
領空侵犯: 他国の領空を侵犯する可能性がありました。
ヘリウムガス: 気球の浮揚に必要なヘリウムガスの需要増加による価格高騰も問題でした（ただし、酸素の薄い高高度では水素でも火災の危険性は低いため、多くのラジオゾンデでは水素が利用されています）。

仕様

プロジェクトルーンで使用された気球の主な仕様は以下の通りです。

サイズ: 15×12メートル（完全に膨らんだ状態）
材質: 厚さ0.076mmのポリエチレン製
構成: 太陽電池、制御用基板、無線アンテナ
周波数: ISM周波数（ISM: Industry Science Medical）

脚注

プロジェクトルーンは、革新的な技術で世界中の人々にインターネットを届けようとした壮大なプロジェクトでしたが、残念ながらその目標を達成することはできませんでした。しかし、このプロジェクトから得られた知見は、今後の通信技術の発展に役立つと考えられます。

関連項目

Google
Google X
Google ドライバーレスカー
Google Glass
Google コンタクトレンズ
高高度気球
成層圏プラットフォーム
大気衛星

外部リンク

公式ウェブサイト

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