Psychedelic Insanity

ALI PROJECTの9作目のオリジナルアルバム（インディーズから通算）である『Psychedelic Insanity』（サイケデリック インサニティ）は、唯一無二の世界観でファンを魅了し続けています。前作『Dilettante』から2年2ヶ月ぶりとなる本作は、収録曲数や最終トラックがインストゥルメンタルである点など、共通点が見られます。

アルバムタイトルが示す通り、「サイケな狂気」をテーマにした本作は、様々な音楽的要素が散りばめられた、聴きごたえのある作品です。

収録曲について

青嵐血風録: 宝野アリカいわく、「愛と誠」「勇侠青春謳」に続く「大和ソング」であり、サビにはグリーグの『4つのノルウェー舞曲 第3番』、ケテルビーの『修道院の庭にて』、間奏にはグリーグの『2つのノルウェーの旋律 第1曲 民謡の調子で』の旋律が引用されています。イントロにはサンプリング音源も使用されています。
暗黒サイケデリック: ALI PROJECTのライブツアータイトルにもなった楽曲で、音楽ゲーム『pop'n music』シリーズにも収録されています。Aメロ直前にはサンプリング音源が使用されています。
CYBER DEVILS: 歌詞が漢字部分以外カタカナで表記されているのが特徴です。当初は3部作として構想されていましたが、系統が異なるため除外された経緯があります。歌詞の内容は中井英夫の短編「卵の王子たち」に影響を受けているようです。イントロや間奏にはサンプリング音源が使用されています。
胡蝶夢心中: 「胡蝶の夢」という言葉が示すように、この世の生の儚さを歌い上げた楽曲です。イントロにはサンプリング音源、サビにはリャードフの『2つの小品 ワルツOp. 9-1』が引用されています。
纏われし者ら: 韻文体詩が混じった、独特な世界観を持つ楽曲です。
欲望:
暴夜layla幻談: 「あらびあ・らいら・げんだん」と読み、「暴夜」はアラビア、「layla」は夜を意味し、千夜一夜物語を彷彿とさせる楽曲です。間奏やイントロ、Aメロ、Bメロにはサンプリング音源が使用されています。
六道輪廻サバイバル: 仏教用語が多用された楽曲で、GAROの『学生街の喫茶店』との類似性が指摘されています。サビ直後にはサンプリング音源が使用されています。
若い死者からのレクイエム: いじめを苦に自殺した子供たちの遺影からインスピレーションを得た楽曲で、彼らの笑顔が語りかけるものを表現しています。サビにはサン＝サーンスの『弦楽四重奏曲第2番ト長調 作品153 第2楽章』が引用されています。
gai desespoir(instrument): 片倉三起也のソロアルバム「Lento」に収録された楽曲の別アレンジバージョンです。タイトルはフランス語で「快活なる絶望」を意味します。

参加ミュージシャン

作詞：宝野アリカ
作曲：片倉三起也
編曲：片倉三起也、平野義久
ストリングスアレンジ：渡辺剛

その他

ブックレットの歌詞に誤りがあり、宝野アリカの衣装は、ドラァグクイーンの紫泉のコーディネートによる「サイバーゴス」というKERA系ファッションである点も注目です。

『Psychedelic Insanity』は、ALI PROJECTの音楽性の幅広さと深さを堪能できる、まさに唯一無二の作品と言えるでしょう。

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