Q (アルバム)

Mr.Childrenの9thアルバム『Q』：ニューヨークと自由なセッションが生んだ名盤



2000年9月27日、Mr.Childrenの9枚目のオリジナルアルバム『Q』がリリースされました。前作『1/42|1_42』から約1年、オリジナルアルバムとしては『DISCOVERY』以来約1年8ヶ月ぶりの作品です。本作は、バンドのこれまでの制作スタイルとは異なるアプローチで制作されました。

制作：桜井和寿のプライベートスタジオからニューヨークへ



レコーディングは、まず桜井和寿のプライベートスタジオで行われました。その後、当時プロデューサーを務めていた小林武史が所有するニューヨークの「Oorong NY Studio」へ移動。完成したてのこのスタジオで、プライベートスタジオで録音された素材を基に、小林と桜井が楽曲の構成を練り直すという作業が行われました。ドラムやギターのフレーズなどは、プライベートスタジオでのセッション音源をそのまま使用している部分もあります。

このアルバムから、桜井和寿は作曲にキーボードを活用するようになったと言われています。また、テンポをダーツの得点で決めたり、コード進行をくじ引きで決めたりするなど、非常に自由なセッションが展開されました。そのため、Mr.Children名義ながらも、桜井和寿のソロシンガーとしての側面が際立った楽曲も含まれています。

アルバムジャケットは、桜井和寿が潜水服を着て、アメリカのグレートソルトレイク州立公園を背景に撮影されたものです。「深海からの脱出」という意味が込められているとのこと。アートディレクターは信藤三雄が担当しました。アルバムタイトル『Q』は、9枚目であることにちなんで、桜井和寿が遊び心で書き始めた小文字の「q」を、メンバーやスタッフが気に入り採用されたものです。桜井自身は「深い意味はない」と語っています。ちなみに、候補には『Hallelujah』や『Stomach Love』もあったそうです。

発売後の反響とツアー



発売後にはライブツアー『Mr.Children Concert Tour Q 2000-2001』が開催されました。2001年2月4日に行われたさいたまスーパーアリーナ公演では、BIGLOBE提供でMr.Children初のインターネット生中継が行われるなど、大きな話題となりました。

チャート成績では、初週売上63.2万枚を記録するも、同日発売の浜崎あゆみの『Duty』に阻まれオリコンチャート初登場2位となりました。累計売上は89.7万枚で、ミリオンセラーには届きませんでした。これは、『Atomic Heart』以降のオリジナルアルバムでは本作のみ1位を獲得できなかったという記録にも繋がっています。

楽曲解説：多様な楽曲群と制作エピソード



アルバムには、ライブで頻繁に演奏される『CENTER OF UNIVERSE』、漫画『バガボンド』をイメージして制作された『その向こうへ行こう』など、個性的な楽曲が収録されています。『NOT FOUND』は19thシングル表題曲として既に人気を博していました。『スロースターター』はメンバーのサッカーチーム「ジュビ研」のゴールシーンをイメージした曲です。『Surrender』は17thシングル『I'LL BE』のカップリング曲のアルバムバージョンです。『つよがり』は前作『DISCOVERY』で収録が見送られていた楽曲で、ニューヨークのオーケストラを起用しています。『十二月のセントラルパークブルース』と『友とコーヒーと嘘と胃袋』は連続して流れる曲で、ニューヨークでの経験が反映されています。『ロードムービー』は、セッションではなくニューヨークで制作された楽曲で、桜井和寿が最も気に入っている歌詞だと語っています。『Everything is made from a dream』はBIGLOBEのCMソングで、マーチをベースにした楽曲です。『口笛』は18thシングル表題曲、『Hallelujah』は当初カップリング曲候補でしたが、本作のリード曲となりました。『安らげる場所』は小林武史のピアノとストリングスが中心の個人的な楽曲です。

制作過程における葛藤



桜井和寿は、後のインタビューで本作の制作当時を振り返り、メンバーのモチベーションの低さや、バンド解散も考えた時期があったことを明かしています。しかし、結果として『Q』は、Mr.Childrenの音楽性を探求する旅路を示す重要な作品となりました。自由な発想と、ニューヨークという異国の地でのレコーディングが、彼らの音楽に新しい息吹を吹き込んだと言えるでしょう。それぞれの楽曲に込められた思い、制作過程でのエピソードは、聴く者の心を深く揺さぶるものがあります。

参加ミュージシャン



Mr.Children (桜井和寿、田原健一、中川敬輔、鈴木英哉)
小林武史
吉田誠
谷口和弘
* 平沼浩司

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