QWERTY配列は、
タイプライターや
コンピューターのキーボードで最も一般的な
キー配列です。アルファベットの最上段左から6文字が「Q」「W」「E」「R」「T」「Y」の順に並んでいることから、この名前で呼ばれています。この配列は、
1872年にクリストファー・レイサム・ショールズによって原型が提案され、
1882年に現在見られる形へと完成しました。
QWERTY配列完成までの道のり
ショールズが
1867年に製作した最初の
タイプライターは、
ピアノのようなキーボードにアルファベットがABC順に並んでいました。しかし、印刷電信機ではアルファベットの前半が左から右へ、後半が右から左へと配置されるなど、様々な
キー配列が試みられました。ショールズは1870年頃からボタン型のキーボードを開発し始め、初期の配列は不明ですが、母音を上段に集めたものや、数字を最上段に加えた配列が使われたと推測されています。
1872年には、「I」を「8」の隣に移動させたり、「S」を「Z」と「E」の間に移動させたりするなど、当時の
モールス符号や年号に対応した配列が見られました。その後、1874年には「I」と「O」を隣り合わせに配置し、「P」と「R」を現在の位置に移動させた
キー配列が登場しました。そして
1882年、現在のQWERTY配列が完成しました。
QWERTY配列誕生の諸説
QWERTY配列誕生には、以下のような様々な説があります。
タイプライターの技術的制約説: タイプライターのアームが衝突するのを防ぐため、打鍵速度を遅らせるように設計されたという説。
販売促進説: タイプライターのセールスマンが「typewriter」という単語を簡単にデモンストレーションできるように考案されたという説。
機械故障防止説: 頻繁に使用する「T」と「H」のキーを離して、機械の故障を防ぐことを目的としたという説。
既存配列改良説: 元々あった英文
タイプライターの配列を基に、数字を英字に置き換えたという説。
特許回避説: 既存配列の特許を回避するために、現在の配列になったという説。
これらの説はQWERTY配列が単なる偶然ではなく、様々な要因が重なって生まれたことを示唆しています。
QWERTY配列普及の理由
QWERTY配列が普及した背景には、タイプライター市場における寡占化が大きく影響しています。1880年代には、レミントンのQWERTY配列に対抗してアメリカンライティングマシンのカリグラフ配列というライバルが存在しました。両者は「どちらが速く入力できるか」を競い合いましたが、決定的な優位性を示すことはできませんでした。その後、タイプライター会社が合併し、タイプライター・トラストという寡占体制が築かれました。その結果、QWERTY配列が統一規格として採用され、市場で広く普及することとなりました。
QWERTYとタイピング技術
QWERTY配列は、全指タイピングやタッチタイピングが確立される前に設計されました。そのため、必ずしも効率的なタイピングを前提とした設計ではありません。しかし、エリザベス・マーガレット・ベイター・ロングリーやフランク・エドワード・マッガリンといった人物がQWERTY配列向けの運指法やタッチタイピング法を考案し、普及に貢献しました。
QWERTY配列の変遷
QWERTY配列は、タイプライターから印刷電信機(テレタイプ)へと引き継がれました。ドナルド・マレーは、1901年にQWERTY配列を基本としたテレタイプ用キーボードを開発し、数字入力にシフトキーを用いる仕組みを採用しました。その後、コンピュータの黎明期には、テレタイプのキーボードがコンピュータの入出力装置として流用され、QWERTY配列が普及しました。
QWERTY配列の亜種とその他のキー配列
QWERTY配列は、世界の多くの国で採用されていますが、各国の言語事情に合わせて様々な亜種が存在します。フランス語圏ではAZERTY配列、ドイツ語圏ではQWERTZ配列が使われています。また、日本語、韓国語、中国語など、アルファベット以外の文字を母語で使用する国では、QWERTY配列に母語の文字配列を組み合わせて使用する例が見られます。さらに、ドヴォラック配列のように、より効率的なタイピングを追求したキー配列も存在します。
参考文献
QWERTY配列に対する誤解
QWERTY配列再考
キー配列の規格制定史 アメリカ編
キー配列の規格制定史 日本編
関連項目
AZERTY配列
QWERTZ配列
Dvorak配列
キー配列
キーボード ([[コンピュータ)]]
タッチタイピング
デファクトスタンダード
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QWERTY腹痛
外部リンク
QWERTY配列に対する誤解
QWERTY配列再考(PDF)
キー配列の規格制定史 アメリカ編 ― ANSIキー配列の制定に至るまで(PDF)
キー配列の規格制定史 日本編 ― JIS
キー配列の制定に至るまで(PDF)