RAF S.E.5

ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー S.E.5の概要

ロイヤル・エアクラフト・ファクトリー S.E.5は、第一次世界大戦中にイギリスが運用した卓越した複葉戦闘機です。この機体は、他の戦闘機に先駆けて西部戦線に配備され、特に優れた性能で知られています。残念なことに、実際の配備が遅れてしまったのは、イスパノ・スイザエンジンの供給不足によるもので、1918年までその影響を受け続けました。最終的には、S.E.5の運用機体の数は、同時に使用されたソッピース・キャメルよりも少なくなりましたが、1917年夏には連合軍の制空権回復に大きく貢献しました。

設計と開発

S.E.5の設計は、ロイヤル・エアクラフト・ファクトリーのヘンリー・P・フォーランド、J・ケンワージー、F・W・グッデン少佐によって行われました。この機体は、150馬力のイスパノ・スイザ8Aaエンジンを搭載することを念頭に置いて開発されましたが、初期のころはエンジンの性能や信頼性に問題があり、設計の弱点も指摘されました。その結果、試作機の1機が事故で失われ、設計者の一人であるグッデン少佐も命を落としました。しかし、設計には改良が施され、結果的に部隊配備されたS.E.5は、急降下や高速飛行が得意な堅牢な航空機として定評を得ることとなりました。

S.E.5は、他のロイヤル・エアクラフト・ファクトリー製の航空機と同様、高い安定性を誇り、機動性にも優れていました。この機体は、当時の戦闘機の中でも急速な速度を誇り、222 km/hの速度は競合機のSPAD S.XIIIに匹敵するものでした。格闘戦では、より小回りの利くソッピース・キャメルに劣るものの、初心者パイロットにとっては飛行が容易で、安定したものでした。

武装面では、S.E.5はヴィッカース機銃を胴体に一丁、ルイス機銃を上翼に装備していました。初期は信頼性が低いとされていた同調装置の影響で、パイロットは特にこのルイス機銃を有効活用することができました。また、高空性能が優れていたため、対ドイツ空軍に対しても充分に戦況を維持する力を持ち合わせていました。

型式と生産

S.E.5の生産が始まると、77機のオリジナルモデルが製造された後、改良型のS.E.5aが登場しました。この改良型では、200馬力のイスパノ・スイザ8bエンジンが搭載され、結果的に128機が生産されました。さらに、S.E.5aは、主にイギリス陸軍航空隊やアメリカ陸軍航空隊などで運用され、合計で5,265機のS.E.5系列が製造されました。特にオースティン・モーターズがそれに多くを供給し、戦争の終結後も多くの機体が使用されました。

派生型としてS.E.5bも存在しますが、これは試作型として開発され、流線型の設計が施されていました。生産はされなかったものの、この機体はその後も研究として残されました。

運用の歴史

S.E.5は1917年3月に第56飛行隊に配備され、初めてのパトロール飛行を4月22日に行いました。当初、パイロットたちはこの機体に失望を感じていましたが、その後すぐに飛行特性や耐久性が評価されました。ただし、動力不足の問題が存在し、6月にはS.E.5aへの移行が始まります。結果として、S.E.5は最も早くから配備された部隊での運用機体となりました。

多くの有名パイロットがこの機体を使用しており、特にビリー・ビショップやエドワード・マノックはその技術で知られています。S.E.5の初期の評価は賛否がありましたが、その後多くのエースパイロットに支持され、優れた戦闘能力を証明しました。

残存機

現在においても、オリジナルのS.E.5aはイングランドのシャトルワース・コレクションで見ることができ、他にもロンドンのミュージアムや豪州などに展示されています。複製機も製作されており、特にニュージーランドのヴィンテージ・エヴィエイター社では複製が実施されています。

このように、S.E.5はその歴史の中で優れた性能と戦果により、多くのパイロットに記憶され続けています。

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