RAM・マーチ01

RAM・マーチ01：1983年シーズンの挑戦

1983年のF1世界選手権でRAMレーシングが投入したフォーミュラ1カー、RAM・マーチ01（March 831）は、マーチのデイブ・ケリーが設計したマシンです。特徴は、市販パーツを多用したシンプルな設計でした。アルミニウム製のモノコックにプラスチック樹脂製のボディを組み合わせ、前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。軽量化を追求し、車重は540kgに抑えられました。

エンジンと開発

本来はコスワースDFV 3リッターV8エンジンを搭載する設計でしたが、RAMレーシングは他チームより出力の劣る旧型DFVを使用せざるを得ませんでした。より高性能なDFYエンジンは高価だったため、使用することができませんでした。イタリアグランプリ以降はマクラーレン仕様のDFYを使用可能になったものの、RAMレーシングはそれを必要としませんでした。

製造とレース活動

1983年前半には3台のRAM・マーチ01が製造されました。シーズンを通して、01/01、01/02、01/03の3台が使用され、01/03はシーズン後にハート製ターボエンジンを搭載して改造されました。RAMレーシングはわずか25名のスタッフで運営される最小規模のF1チームで、1台体制でシーズンに臨みました（フランスグランプリのみ2台体制）。

ドライバーと結果

レギュラードライバーは、1981年にRAMからデビューしたエリセオ・サラザールでした。しかし、サラザールは予選通過わずか2回という苦戦を強いられました。ベルギーグランプリの後、サラザールはチームを離脱。その後、カナダグランプリにはジャック・ヴィルヌーヴがスポット参戦しましたが予選落ち。イギリスグランプリからはF1デビューとなるケニー・アチソンがドライブしました。アチソンも予選落ちが続きましたが、最終戦南アフリカグランプリでは決勝進出を果たし、12位でフィニッシュしました。フランスグランプリでは、スポット参戦のジャン＝ルイ・シュレッサーがセカンドカーをドライブしましたが、予選落ちに終わりました。シーズンを通してRAM・マーチ01の最高位はアチソンの12位となり、コンストラクターズランキング最下位に終わりました。

まとめ

RAM・マーチ01は、リソースが限られたチームが、工夫と努力でF1世界選手権に挑んだ象徴的なマシンと言えるでしょう。高度な技術や潤沢な資金力を持たないチームが、いかにF1という世界で戦っていくのか、その困難さと挑戦を物語る一例として、F1の歴史に刻まれています。 市販パーツを多く使用した設計や、ドライバー交代の繰り返しなど、チームの苦戦が見て取れる一方で、決して諦めずにシーズンを戦い抜いた姿勢は、F1という世界における小さなチームの大きな挑戦を示しています。このマシンの戦績は低迷したものの、F1の歴史において、決して忘れられない存在として記録されています。

参考文献

Ian Bamsey: The 1000 bhp Grand Prix Cars, 1988 (G.T. Foulis & Co. Ltd), ISBN 978-0854296170
Adriano Cimarosti: Das Jahrhundert des Rennsports. Stuttgart 1997, ISBN 3-613-01848-9
David Hodges: A-Z of Grand Prix Cars 1906–2001. 2001 (Crowood Press), ISBN 1-86126-339-2
David Hodges: Rennwagen von A-Z nach 1993. Stuttgart 1993, ISBN 3-613-01477-7
* Pierre Ménard: La Grande Encyclopédie de la Formule 1. 2. Auflage, St. Sulpice, 2000, ISBN 2-940125-45-7

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