エリセオ・サラザール

エリセオ・サラザール・バレンスエラ：F1を駆け抜けたチリ人ドライバー

エリセオ・サラザール・バレンスエラ（1954年11月14日生まれ）は、チリ共和国出身の元レーシングドライバーであり、F1世界選手権に参戦した唯一のチリ人として知られています。彼のキャリアは、数々の国際レースへの参戦と、F1という最高峰の舞台での挑戦によって彩られています。

F1への道：才能と幸運の出会い

サラザールは1978年から1979年にかけてブラジルF3に参戦し、経験を積みました。転機となったのは1979年。イギリスのスラクストンでF3レースを観戦後、ヒッチハイク中に偶然にも、後にF1世界チャンピオンとなるネルソン・ピケと出会います。この出会いが、サラザールの運命を大きく変えました。ピケはサラザールを、当時F5000で活躍していたチーム、ラルトのロン・トーラナックに紹介。サラザールは1980年、F5000シリーズに参戦し、見事3勝を挙げてランキング2位を獲得。この成功が、F1への扉を開くことになります。サラザール自身も、ピケとの出会いを「これほどの幸運は後にも先にもない」と振り返っています。

F1挑戦：RAM、マーチ、エンサイン、ATS

1980年、サラザールはオーロラAFXフォーミュラ1シリーズ（イギリス国内選手権）にRAMレーシングから参戦。その後1981年には、RAMがマーチ・グランプリとしてF1世界選手権にエントリーし、サラザールもドライバーとして参戦します。サンマリノGPでF1デビューを果たしますが、決勝ではリタイヤ。マーチでの6戦中、決勝進出はサンマリノGPのみでした。しかし、第7戦スペインGPからエンサインに移籍すると、第12戦オランダGPで6位入賞という快挙を達成。初入賞は、彼のF1キャリアにおける大きな転換点となりました。

1982年にはATSに移籍し、サンマリノGPでは5位に入賞。これが彼のF1キャリアにおける最高位となりました。1983年はRAMに復帰するも、開幕戦での15位完走後、予選落ちが続き、ベルギーGPを最後にチームを離脱します。その後も、RAMが参戦した1986年の国際F3000選手権でもサラザールはチームをサポートし参戦しています。

F1後の活躍と伝説の一戦

F1離脱後も、サラザールの活躍は続きます。1983年のル・マン24時間レースに童夢・RC-82で出場し、国際F3000選手権、IMSA、CART、IRLなど、様々なカテゴリーで活躍しました。特にIRLではトップドライバーとして名を馳せました。

しかし、サラザールを語る上で外せないのが、1982年ドイツGPでのネルソン・ピケとの接触です。当時トップを走行していたピケに周回遅れで追いついた際、サラザールはブレーキングミスで接触し、両者リタイヤ。激怒したピケはサラザールに詰め寄り、テレビカメラの前で激しい口論となる場面も放送されました。この出来事は、皮肉にもサラザールの名前を世界中に知らしめることになったのです。ピケは、このレースで優勝のチャンスを失ったこと、そして恩人であるサラザールとの不穏な結末に、強い憤りを感じたと言われています。

2005年にはグランプリマスターズにも参戦するなど、サラザールのレーシング人生は長く、そして記憶に残るものとなりました。彼の功績は、F1で活躍した唯一のチリ人ドライバーという歴史的意義とともに、これからも語り継がれるでしょう。

レース戦績

サラザールのレース戦績は、イギリス・フォーミュラ1選手権、国際F3000選手権、F1、ル・マン24時間レース、アメリカン・オープンホイール、PPGインディカーシリーズ、インディカーシリーズ、インディ500、セブリング12時間レースなど多岐に渡り、詳細な記録は各種モータースポーツデータベースを参照ください。

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