RED (村枝賢一)

『RED』は、村枝賢一による日本の漫画作品で、西部開拓時代末期のアメリカを舞台にした復讐劇です。1998年から2005年にかけて『ヤングマガジンアッパーズ』と『週刊ヤングマガジン』で連載され、単行本は全19巻、新装版は全10巻が刊行されました。

物語は、19世紀末のアメリカを背景に、主人公のレッドが、かつて騎兵隊に部族を虐殺されたインディアンとして、復讐を誓うところから始まります。レッドは、伝統的な西部劇における善玉と悪玉の構図を逆転させ、騎兵隊を悪役に、インディアンを主人公に据えています。また、もう一人の主人公として、西南戦争に敗れアメリカに渡った元士族の伊東伊衛郎が登場し、娼婦、巡回牧師、アパッチ族など、様々な背景を持つ人々が物語に絡み合います。

この作品は、作者の初期作品『BIBLE』を下敷きにしており、複数の主人公が登場し、それぞれの運命が交錯していく群像劇の要素や、ロードムービー的な展開が特徴です。ニューヨークからフロンティアまで、アメリカ全土を舞台に、レッドたちの壮大な復讐劇が繰り広げられます。

あらすじ

1886年、西部開拓が終焉を迎えようとしていたアメリカ。レッドは、かつて部族を虐殺した騎兵隊への復讐を誓い、旅を続けていました。そんな中、レッドは西南戦争に敗れた元士族の伊東伊衛郎、娼婦のアンジーと出会います。三人は共に旅をする中で、巡回牧師のグレイから、レッドが10年前に虐殺されたウィシャ族の生き残りであることを知らされます。

グレイから強力なリボルバー「ヘイトソング」を渡されたレッドは、復讐を加速させます。アンジーは独自の調査で騎兵隊の情報を集め、伊衛郎はレッドの復讐の旅に同行する中で、自分の生き方を見つめ直していきます。

物語が進むにつれて、レッドは元騎兵隊員でありながら、虐殺に反対したエドワード・ゴールドスミスと出会い、彼と協力して復讐を進めることになります。また、インディアンの少女スカーレットや、アパッチ族の少年チリカなど、様々な人物との出会いを通じて、レッドの復讐は複雑さを増していきます。

旅の中で、レッドたちはかつてウィシャ族を虐殺した騎兵隊の隊長ブルーと対峙することになります。ブルーは、アメリカを変えようとする大きな陰謀を企てており、レッドの復讐は、単なる個人的なものではなくなっていきます。

最終的に、レッド、伊衛郎、アンジー、ゴールドスミス、チリカ、スカーレットたちは、それぞれの過去や運命と向き合いながら、ブルーとの決戦に挑みます。彼らの旅の果てに何が待っているのか、読者の心を揺さぶる物語となっています。

登場人物

レッド
物語の主人公。スー族のウィシャ族の生き残りで、部族を虐殺した騎兵隊への復讐を誓う。長身で白い髪が特徴。

伊東伊衛郎
旧肥後藩の元士族。西南戦争で敗北後、アメリカに渡る。レッドと出会い、復讐の旅に同行する中で、自分の生き方を見つめ直す。

アンジー
伊衛郎と同じ町に住む娼婦。レッドに好意を抱き、復讐の旅に同行する。天真爛漫で気っ風の良い性格。

スカーレット
白人の中で暮らすインディアンの少女。出生の秘密からブルーに追われる。レッドと出会い、やがて自らの宿命を悟る。

チリカ
アパッチ族の少年。家族をメキシコ軍に殺された過去を持つ。レッドと行動をともにする。

グレイ
レッドの復讐を手伝う謎の巡回牧師。試作拳銃のヘイトソングをレッドに渡す。

エドワード・ゴールドスミス
元ブルー小隊隊員で、虐殺に反対したアメリカ陸軍大佐。レッドと協力してブルーを追う。

ブルー
ブルー小隊の指揮官。アメリカを変えようとする陰謀を巡らせる。

この作品には、他にも多くの魅力的なキャラクターが登場し、物語を彩っています。

作中用語

ウィシャ
レッドが生まれたスー族の一部族。

ヘイトソング
レッドが使用する試作型拳銃。強力な破壊力を持つ。

ホワイトリバー
ウィシャ族が虐殺された場所。

マザスカ
スー族の別の一族。レッドが一時身を寄せていた。

『RED』は、西部劇というジャンルでありながら、社会のマイノリティに焦点を当て、人間の心の奥底にある復讐心や、アイデンティティを問う作品です。緻密なストーリー展開と、個性的なキャラクターが織りなす壮大な復讐劇は、多くの読者を魅了しています。

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