RSOトラクター

RSOトラクターの概要

RSOトラクター（RaupenSchlepper Ost）は、第二次世界大戦中にドイツのシュタイアー・ダイムラー・プフ社によって設計された装軌式牽引車です。この車両は、東部戦線での物資輸送や砲兵支援を目的に開発されました。ドイツ軍が1941年にソビエト連邦へ侵攻した際、厳しい冬季条件が重なり、未舗装の道路は泥沼と化しました。その結果、馬車や装輪式トラックによる補給活動が困難となり、新たな牽引・補給用車両の開発が急務となりました。

開発の経緯

1942年春、戦車委員会はシュタイアー社を新型の牽引車両の開発担当として指名しました。その年の夏には、歩兵師団に追従できる速度で、雪や泥の中でも安定して走行可能な、安価で量産しやすい車両の設計概念が提示されました。これを受けて、RSOは次第にその姿を整えていきました。

本車両は、シンプルなトランスミッションと、リーフスプリング式のサスペンションを採用しており、部品は同社が生産していた1500Aトラックからの流用がありました。1942年11月から本格的な生産が始まり、信じられないほどの高い地上高を持つことも特長の一つです。泥や雪に埋もれることなく走行するため、ヒトラーが指定した600mmのグランドクリアランスを確保していました。

RSOのバリエーションと生産

その後、1943年にはRSO/02の生産が開始され、各種派生車両が製造されました。アウトウニオン社、マギルス社、KHD社、リケ・グラーフ＆シュティフト社も生産ラインに加わり、最終的には27,792輌という膨大な数が生産されました。RSOは本来、東部戦線用として開発されたものであったが、戦況の変化から東西問わず広く運用されることとなりました。

性能と特長

RSOは、その設計により重量と幅のバランスが良く、悪路においても物資を安定して運搬できる能力が評価されました。ただし、大戦後期には速度の遅さが問題となり、撤退戦ではしばしば放棄されることもありました。この車両は物資の輸送以外にも、7.5 cm PaK 40対戦車砲やネーベルヴェルファーなど、さまざまな砲兵装備の牽引にも使用されました。戦後も現存したRSOは、民間の土木工事や雪上車として再利用されました。

派生型と特別バージョン

RSOの派生型として、水陸両用型やディーゼルエンジンを搭載したRSO/03が存在しますが、RSO/03は生産量が少なく、特に目立つ存在ではありません。また、RSO/02を基にした7.5cm対戦車自走砲型（RSO/PaK40）も開発されました。この型は1943年に製作され、銃を搭載した特異な形状が特徴ですが、実用試験ではいくつかの欠点が指摘され、量産は中止されました。すなわち、防御力の脆弱さや発砲時の揺れが問題視されたのです。

結論

RSOトラクターは、極限の戦場条件下で物資を安定して運ぶために開発された非常にユニークな車両であり、そのシンプルな構造と高い走破性から、多岐にわたる運用が可能でした。戦後も多くのRSOが残存し、民生用として再利用され続けています。

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