RUN (長渕剛の曲)

長渕剛の代表曲「RUN」：音楽性、制作背景、そしてその後の影響

1993年9月22日、日本のシンガーソングライター、長渕剛の26枚目のシングル「RUN」がリリースされました。この曲は、同年に放送された長渕剛主演のTBS系テレビドラマ『RUN』の主題歌として書き下ろされ、オリコンチャートで1位を獲得、99万枚という驚異的なセールスを記録しました。アルバム『Captain of the Ship』からの先行シングルとして発表されたこの曲は、長渕剛のキャリアにおいて重要な位置を占める作品となっています。

アメリカでのレコーディングと独特のサウンド

「RUN」は、長渕剛にとって「しゃぼん玉」以来となるロサンゼルスでのレコーディングによって制作されました。ケニー・アロノフ、ロイ・ビッタンといったアメリカの著名なミュージシャンが参加し、楽曲に深みと奥行きを与えています。サウンド面では、バンド形態の演奏に加え、マンドリンが用いられることで、民族音楽を思わせる独特の曲調が特徴となっています。

しわがれた歌声と歌詞に込められたメッセージ

この曲で聴かれる長渕剛の歌声は、デビュー当時とは大きく異なり、非常にしわがれた、力強いものとなっています。1990年代の長渕剛の作風を象徴する、独特のヴォーカルスタイルと言えるでしょう。歌詞は、金銭よりも愛や真実を追い求める人間の姿を力強く表現しています。

相田みつをへのオマージュと謝罪

「RUN」の歌詞の一節が、詩人の相田みつをの作品からの盗作ではないかという疑惑が浮上しました。長渕剛は、相田みつをの作品にインスパイアされたことを認め、遺族に謝罪。遺族側はそれを光栄であると受け止め、その後、長渕剛は次のシングル「人間」で相田みつをの代表作「人間だもの」の一節を引用し、アルバムのジャケットに敬意を表すメッセージを掲載しています。このエピソードは、長渕剛の人間性や作品への真摯な姿勢を知る上で、重要な出来事と言えるでしょう。

音楽批評家の評価

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「RUN」について、重苦しい悲愴感とシニカルな表現、そして力強い歌声が織りなす、自問自答的な内省歌と評されています。上手に世を渡ろうとして失敗し、嘘で塗り固めた人生を送る男の嘆きが、しわがれた歌声を通して表現されていると分析されています。また、やるせない嘆きの感情と、キャッチーなメロディとの対比も指摘されています。

リリースとプロモーション

「RUN」は、東芝EMIのエキスプレスレーベルよりリリースされました。先行シングルとしてリリースされたことで、アルバム『Captain of the Ship』のプロモーションにも大きく貢献しています。このシングルとアルバムの同時購入者には、プレゼントキャンペーンとしてオリジナルゴールドディスクプレートが贈呈されました。カップリング曲には、1982年発表のアルバム『時代は僕らに雨を降らしてる』に収録されていた「愛してるのに（'93 大阪城ホール Live Version）」が収録されています。

チャート成績とライブパフォーマンス

「RUN」は、オリコンチャートで1位を獲得し、99万枚のセールスを記録しました。「しゃぼん玉」、「とんぼ」に続く、長渕剛のシングル3作連続1位獲得という快挙を達成しました。しかし、この人気曲にも関わらず、ライブでの演奏頻度は高くなく、特別な機会にのみ披露されてきました。

メディアでの使用とカバー

「RUN」は、主題歌を務めたドラマ『RUN』において、その世界観を大きく彩りました。ドラマは平均視聴率15.2％を記録し、大きな話題となりました。その後、「RUN」は、長渕剛自身によるセルフカバー、パク・ヨンハ、柏原芳恵など、多くのアーティストによってカバーされています。

まとめ

「RUN」は、長渕剛のキャリアにおいて、音楽性、商業的成功、そしてアーティストとしての姿勢を示す上で、非常に重要な作品と言えます。アメリカでのレコーディング、独特のサウンド、力強い歌声、そして相田みつをへのオマージュという要素が複雑に絡み合い、唯一無二の楽曲となっています。この曲は、長渕剛の音楽史において、今後も語り継がれていくことでしょう。

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