RXTE

RXTE（Rossi X-ray Timing Explorer）は、アメリカ合衆国が開発したX線天文衛星です。1995年12月30日にケープカナベラル空軍基地からデルタロケットによって打ち上げられ、宇宙での観測を開始しました。

当初はXTE（X-ray Timing Explorer）という名称でしたが、1996年初めに天文学者ブルーノ・ロッシ（Bruno Rossi）に敬意を表して、ロッシX線タイミング探査機（Rossi X-ray Timing Explorer：RXTE）に改名されました。

観測装置

RXTEは、3つの主要な観測装置を搭載していました。

PCA（Proportional Counter Array）：比例計数管アレイは、X線エネルギーの測定と高精度な時間変化の測定を可能にしました。
HEXTE（High-Energy X-ray Timing Experiment）：高エネルギーX線タイミング実験は、より高エネルギーのX線を観測しました。
ASM（All Sky Monitor）：全天モニターは、天球全体のX線源を監視し、変動するX線源を検出しました。

これらの観測機器により、RXTEはブラックホール、中性子星、X線パルサー、X線バーストといった天体からのX線の時間変動を詳細に観測することができました。

観測終了と落下リスク

RXTEは2012年1月4日に最後の観測データを地球に送信し、翌1月5日に運用を終了しました。しかし、運用終了後、衛星の制御が不能となり、落下のリスクが指摘されました。

NASAの発表によれば、RXTEは2014年から2023年の間に制御不能な状態で地球に落下する可能性があり、1/1,000の確率で人に被害を与える危険性があるとされました。このリスクは、NASAが通常容認する人工衛星の再突入リスク(1/10,000)よりも10倍高く、過去に落下騒動を起こしたUARS（1/3,200）やROSAT（1/2,000）よりも高い数値でした。

この高い落下リスクの原因は、RXTEが1995年12月に打ち上げられた衛星であり、NASAが軌道上デブリに関する最初のガイドラインを作成する4か月前であったため、軌道変更のための推進薬を搭載していなかったことにあります。そのため、打ち上げ後は再突入の制御を行うことができない状態でした。

幸いにも、RXTEの軌道傾斜角は23度と比較的低いため、中高緯度地域への落下リスクは低いとされています。

業績

RXTEによる観測データは、様々な天体現象の研究に貢献しました。

一般相対性理論の検証：RXTEのデータは、一般相対性理論によって予測される慣性系の引きずり効果（フレームドラッギング）の証明に使用されました。
中間質量ブラックホールの位置決定：2006年1月には、中間質量ブラックホール候補であるM82 X-1の位置を特定するためにRXTEのデータが活用されました。
最小ブラックホールのサイズ推定：2008年4月には、RXTEの観測データを用いて、当時知られていた中で最小のブラックホールのサイズが推定されました。

まとめ

RXTEは、X線天文学の分野において、重要な役割を果たした人工衛星です。ブラックホールや中性子星といった高エネルギー天体の時間変動を観測し、そのデータは天体物理学の研究に多大な貢献をしました。運用終了後には落下リスクも指摘されましたが、その観測成果は今後も研究者たちによって活用されていくでしょう。

参考文献

RXTE関係の天文ニュース（日本語）
MIT's Rossi X-Ray Timing Explorer Project
NASA Mission Site
Video documentary

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