ROSAT

ROSAT (ROentgen SATellite)について

ROSATは、1990年代に運用されたドイツのX線観測衛星です。ドイツではX線をヴィルヘルム・レントゲンにちなんで「レントゲンシュトラーレン」と呼ぶことから、この衛星も「レントゲンサテリット(Röntgensatellit)」と名付けられ、その略称としてROSATと呼ばれています。

打ち上げとミッション

1990年6月1日、ROSATはアメリカのケープカナベラルからデルタIIロケットによって打ち上げられました。当初は5年間の計画でしたが、実際には8年を超える1999年2月12日まで運用されました。この衛星はX線天文学における多くの発見をもたらし、その後の研究に大きな影響を与えました。

構造と観測機器

ROSATの主な特徴は以下の通りです。

大きさ: 2.38m × 2.13m × 4.50m
重さ: 2426kg

観測機器としては、以下のものが搭載されていました。

X線望遠鏡 (XRT)
位置検出比例計数管 (PSPC) 2基
高解像度X線撮像装置 (HRI)
広視野紫外線カメラ (WFC)

これらの機器を用いて、ROSATは宇宙のX線や紫外線領域の観測を行い、多くの天体現象を捉えました。

ROSATの主な功績

ROSATは、以下のような多くの成果を挙げました。

X線全点掃天カタログ (15万星)
極端紫外線の全点掃天カタログ (479星)
超新星残骸と銀河団の詳細な形態研究
分子雲のX線放射の影の検出
ジェミンガからのパルスの検出
孤立した中性子星の検出
彗星からのX線放射の発見
シューメーカー・レヴィ第9[[彗星]]の木星衝突時のX線放射の観測

これらの観測結果は、天体物理学の研究に大きく貢献しました。

設計変更

当初、ROSATはスペースシャトルで打ち上げられる予定でしたが、チャレンジャー号の事故により、デルタIIロケットでの打ち上げに変更されました。この変更に伴い、太陽電池パネルをロケットのフェアリングに収めるため、3分割にするなどの設計変更が行われました。

運用停止と再突入

ROSATは当初5年間のミッションで設計されていましたが、4年間延長され、1999年2月12日に運用を終了しました。打ち上げ当初は高度580kmの軌道を周回していましたが、大気抵抗により徐々に高度を下げ、2011年9月には高度270kmにまで低下しました。

再突入の騒動

2011年10月には大気圏への再突入が予測され、その破片が地上に落下する可能性が懸念されました。特に、ROSATの構造にセラミックやガラスが多く使われているため、燃え尽きずに残る破片が多いと予測されました。落下による人体への影響は1/2000と見積もられ、一時騒動になりました。

実際の再突入

しかし、騒動とは対照的に、ROSATは2011年10月23日午前10時頃、ベンガル湾上空で大気圏に再突入し、当初の懸念に反して、燃え尽きて地上への被害は報告されませんでした。

再突入時の教訓

ROSATの再突入は、宇宙ゴミ問題の重要性を示すとともに、衛星設計における安全性の考慮の必要性を改めて浮き彫りにしました。現在の衛星設計では、再突入時に燃え尽きるように設計されることが一般的です。

その他

ROSATの再突入の際には、隕石落下のSF映画をイメージして、衝撃による巻き添えを恐れた人もいました。しかし、実際には質量が小さいほど空気抵抗で大きく減速されるため、ROSATのデブリの地上への落下速度は最大で約450km/h程度と予測されていました。

参考文献

以下は、ROSATに関する情報を得るのに役立つ参考文献です。

ROSAT:ドイツ航空宇宙センター
The ROSAT Mission
UK ROSAT Guest Observer Centre

関連項目

ABRIXAS
UARS - 同じく2011年に落下した人工衛星。

外部リンク

ROSAT:ドイツ航空宇宙センター
“ROSAT”. ドイツ航空宇宙センター DLR. 2011年10月23日閲覧。
“The ROSAT Mission”. マックス・プランク地球外物理学研究所. 2008年12月5日閲覧。
“UK ROSAT Guest Observer Centre”. レスター大学, Department of Physics & Astronomy. 2008年11月24日閲覧。
“A live view of where ROSAT is”. 2006年4月1日閲覧。
* “ROSAT re-entry iPhone application”. 2011年10月17日閲覧。

もう一度検索